岡田武史と澤穂希が語る「短所を克服しないマネージメント術」

ビジネス

 



ある講演会で、良いお話を聞いたので紹介します。

 

サッカーの元日本代表監督で、現在はFC今治のオーナー兼会長の岡田武史さんと、女子日本代表のキャプテンで、先ごろ現役引退された澤穂希さんの対談形式の講演で、夢の実現をテーマにしたお話でした。

 

多くのお話の中で、私が一番興味深く聞いたのは、岡田さんが組織作りについてお話されていた部分でした。

 

ご自身が代表監督時代などで選手を見るにあたって、好ましいタイプと思ってみているのは、欠点が少なくすべてが80点平均の選手よりは、50点、60点の部分があっても、どこかに100点近いところがあるような、何か特徴を持った選手なのだそうです。

 

その理由は、80点の選手を何人集めても、最高レベルは80点までにしかなりませんが、それぞれ異なる部分で100点を持った選手を組み合わせれば、お互いの短所も補完し合って、すべての部分で100点のチームが作れるかもしれないからなのだそうです。個々の弱点の克服より、チームとして長所を生かし、短所を補完し合うことを考えれば、チーム全体としてのレベルを上げることができるということです。

 

また、澤さんも同じようなことをおっしゃっていて、彼女は向いていることは向いている人がやればよいという考え方で、自分の弱点を克服しようという取り組みはあまりしなかったのだそうです。

 

どんなに頑張っても、例えば走ることが速い人には勝てないですし、それならば自分の長所や特徴が何かを自覚し、それをどうやって強化していこうかということを考えていたそうです。誰か他の選手と競ったとしても、自分の方が優れているのはどこかを考えて勝負をしていたそうで、苦手なことは他の得意な人に任せ、自分は自分の得意なことでチームに貢献しようという考え方だったそうです。

 

これは特に日本企業で多いことなのかもしれませんが、過去の課題を洗い出し、その改善策を考え、それを実行しながら結果を検証していくという、「欠点を減らす取り組み」をします。これ自体は意味があることだと思いますが、これらは「短所を克服する」「マイナスを減らす」という取り組みであり、足りない部分を平均レベルまで取り戻そうということであり、「長所を伸ばす」という動きではありません。

 

もう一つ、お二人が共通しておっしゃっていたのは、「楽しさがなければ続けられない」ということです。岡田さん自身、かつて選手の時代は「あいつに負けるものか」という負のパワーをモチベーションにしていたところがあるそうですが、指導者として若い世代を指導するようになってからは、「負けたくない」ではなく「勝ちたい」というプラスのパワーを強調して指導することが必要だと感じているそうです。澤さんは、「サッカーが好き、楽しい」という前提がなければ、前向きな努力を続けることは難しいということをおっしゃっていました。

 

今、自分の仕事を「楽しい」と思って取り組んでいる人は、どのくらいいるのでしょうか。特にサラリーマンの人たちの様子を見ていると、私の印象ではそれほど多いようには感じられません。そうなってしまっている理由の一つには、「短所の克服」という動きが強調され過ぎていることがあるように思います。

 

そもそも短所というのは、その人にとっては苦手なことです。その苦手なことに取り組むというのは、決して楽しいことではないはずですし、それを続けることが仕事であるならば、仕事から楽しさを見出すのはかなり難しいことになります。

 

仕事を楽しそうでない人が多いのも、いま一つ生産性が上がらないのも、「短所の克服」に目が行き過ぎていて、「長所に注目すること」を忘れてしまっているからではないでしょうか。あらためてそんなことを考えさせられたお話でした。

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ユニティ・サポート小笠原隆夫

ユニティ・サポート小笠原隆夫

IT業界出身で現場のシステムエンジニアの経験も持つ人事コンサルタントです。 人事課題を抱え、社内ノウハウだけでは不足してその解決が難しい企業、100名以下から1000名超の企業まで幅広く、人事制度構築、...

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