東京だけが満員電車に悩まされる理由と、解決するための唯一の策

車・交通

 

小池百合子東京都知事が選挙公約のひとつに掲げていた「満員電車ゼロ」。今のところ豊洲市場や東京五輪会場などの問題が山積していて手がつけられないようだが、そもそもなぜ都知事はこの満員電車を公約に掲げたのか。日本では東京特有の現象だからだと、個人的には思っている。

 

東京23区の人口は約1000万人と、日本在住者の約12分の1がここに住んでいる。目と鼻の先にある横浜市はそれに続く日本第2の都市で人口370万人。それ以外にも川崎市、さいたま市、千葉市と100万人級の都市が並ぶ。一極集中という言葉を改めて思い知らされる。

 

鉄道の混雑率を示す数字として、定員乗車時を100%として実際の乗客数を示す指標がある。国土交通省の資料によると、首都圏の主要区間の平均混雑率が150%を超えているのに対し、それ以外の地域では150%を超える路線はない。つまり日本の他の大都市では、東京ほど満員電車に悩まされていない。

 

 

■東京以外の都市の電車がそれほど混雑しないのはなぜか?

 

首都圏に次いで人口が多いのは関西圏だ。大阪市には約270万人、京都市と神戸市は約150万人が住み、奈良市や和歌山市にも多くの人が暮らしている。しかしこの5都市を合わせても、東京23区+横浜市の半分だ。しかも東京の鉄道網が、山手線を中心として四方八方に伸びているのに対し、関西は京阪神という太い幹があり、そこから和歌山、奈良、宝塚を結ぶ路線が伸びる状況になっている。しかも京阪神はJRを含めて3路線、それ以外でも2路線が競合している。

 

混雑率は首都圏ほどではないのに競争は激しい。そこで関西の鉄道は昔から、サービスを競ってきた。たとえば大阪〜京都間では、阪急電鉄、京阪電気鉄道ともに、JRの特急車両のように2ドアで、座席が進行方向を向いたクロスシートなのに乗車券だけで乗れる列車を用意。JRはこれに対抗して、3ドアながらやはりクロスシートの車両を走らせている。首都圏では京浜急行が同様のサービスを展開しているが、かつては3ドアのクロスシートが主流だったJRの東海道線や横須賀線は、現在は山手線と同じ4ドアのロングシートが主体になってしまった。

 

続いて人口が多いのは、230万人を擁する名古屋市を中心とする中京圏だ。しかしこちらはトヨタ自動車のお膝元ということもあり、自動車で移動する人が多い。よってJR、名古屋鉄道、近畿日本鉄道とも、首都圏や関西圏では見かける10両以上の長大編成はなく、最長8両となっている。それ以外の大都市圏を見ると、福岡市と北九州市という2つの100万人級都市を持つ福岡圏で12両編成が走っていたり、札幌市周辺ではロングシート車両が多くなっていたりという地域差はあるものの、3ドアのクロスシート6両がスタンダードになっているようだ。

 

筆者はパリ、フランクフルト、ジュネーブなどヨーロッパのいくつかの都市の通勤電車に乗ったことがある。編成は長かったりするけれど、座席はクロスシートが一般的で、2階建て車両も多い。鉄道は座って移動するものという考えが根付いているようだ。利用者が東京ほど多くないからできる技だろう。もちろん新興国では東京を超える過酷なラッシュもあるようだが、先進国でもっとも通勤ラッシュが激しいのは東京と言ってよさそうだ。

 

では東京の満員電車をゼロにすることはできるのか。筆者は鉄道自体の対策ではなく、在宅勤務や地方移転などの策を取るほうが好ましいと思っている。そもそも一極集中が満員電車を生み出しているわけで、この状況を肯定した対策を取るべきではないし、待機児童問題など他の問題も解決に向かう可能性があるからだ。

 

都知事自らがストレートに一極集中解消とは言い難いだろう。都民の一部に出て行ってもらうことを意味するからだ。しかし満員電車ゼロという言葉を使ってこの問題に取り組むのはアリだと思う。日本のためにも、そんな政策を実行してほしい。

 

※本記事は2016年11月11日時点の情報です

 

 

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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