70代の超高齢出産! 母親のリスクより「子どもの権利」を考えるべき

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清水なほみ

 

インドの70代の女性が出産したことで話題を呼んでいるようですが、この場合、卵子は確実に第3者から提供されたものですね。70代の女性の卵巣から、卵子を採取することは100%不可能です。また、閉経後はホルモン補充をしなければ子宮も委縮しますから、体外受精に至るまでに医学的にはかなり危険なホルモン投与がなされていた可能性が考えられます。治療した病院は「健康上治療に耐えられる状態だと判断した」と述べているようですが、70代で妊娠・出産すること自体は母体の生命にもかかわるリスクになりえます。

 

日本産婦人科学会では、卵子提供による体外受精を行う場合の年齢の上限を45歳としています。卵子提供ではない、自分の卵子での体外受精に年齢の上限が設けられていないのは、43~44歳くらいになれば体外受精を行っても妊娠が成立しなくなるからです。卵子提供の場合、何歳になっても子宮さえ健康な状態であれば妊娠することは可能です。なので、倫理的側面も考慮して年齢の上限を設ける必要があります。45歳以上で卵子提供を受けたからといって、法律的に罰せられたりはしませんが、母体の健康リスクと生まれてきた子どもを母親が責任をもって育てられる年齢のリミットとして45歳を目安にしているのです。また、ホルモン補充療法に関しても、投与の上限の目安を60歳としています。これは、60歳以上の方にホルモン投与を行う場合、メリットよりリスクの方が上回る可能性があるからです。

 

今回のインドでの治療にも、倫理的側面も含めて批判的意見が出ているようですが、母体の健康を守るという視点からも、生まれてきた子どもの「健康に育つ権利」という視点からも、あまりに高齢になってからの妊娠・出産はお勧めできません。母体の健康リスクについては、「妊娠したいと思った本人の自己責任」で済まされるかもしれません。リスクをとってでも「妊娠・出産する」ということを本人が選んだということで、あくまで本人の選択にゆだねられる部分はあります。

 

しかし、生まれてきた子どもの権利についてはどうでしょうか? 高齢で出産した場合、その後、責任をもって育児ができない状態になるかもしれません。子どもが成人するまでに寿命を迎えてしまう可能性だってあります。生まれてきた子どもには、「健康に育つ権利」があります。単純に「何歳になっても妊娠したい」という理由で、その後の育児のことを考えずに妊娠することは妊娠する側のエゴでしかありません。生まれてくる子どもの幸せを考えれば、「自分が責任をもって育てられる年齢の上限は何歳なのか」はおのずと分かると思います。

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清水なほみ

女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性...

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