「歩きスマホ率」で見る東京と大阪の違い
最近、大阪に出張する機会が多くなった。ご存知の方も多くいるとは思うが、大阪と東京ではいろいろな違いがある。
私の趣味でもある鰻。鰻を捌く時に、東京は背開き、大阪は腹開きだ。諸説あるが、東京で腹を開くのは切腹をイメージさせるので避けられたのではないかという。一方、大阪の場合には、腹を割って話をするということで、背開きではなく腹開きであるという。
エスカレーターの乗り方も違う。大阪の人はエスカレーターに乗ると右側に並ぶ。追い抜かしていく人は左側だ。東京の人は左側に並ぶ。追い抜かしていく人は右側だ。
今回、出張で特に気になったのは、歩きスマホ率の違いだ。
大阪の人は歩きスマホが少ないからだ。歩いている時は、とにかく歩きに専念しているか、友達や仲間などと話をしている。東京と比べると歩きスマホ率がはるかに低い。
だから、大阪の人達の歩く早さは東京と比較にならない。大阪を歩く人達の早さは、まるで流れの早い川のようだ。特に梅田などの地下街の流れは日本一早い人の流れではないかと思うほどだ。ちょっと油断をすると、人にぶつかってしまう。東京の場合、歩きスマホをしている人はゆっくり歩くから、前の人とぶつかったり、後ろの人からぶつかられたりするケースも少なくない。おなじ衝突でも、大阪の理由とは正反対だ。
大阪の歩きスマホ率が低いのは、東京人と大阪人の気質の違いによるものだ。
東京の場合、住民同士でも隣近所との付き合いが薄い。まして街に出れば他人ばかりで、コミュニケーションなどほとんどない。
一方の大阪は、誰かれ構わずコミュニケーションする。何か調べものがあれば、スマホを使う東京人と違い、まず誰かに声をかける。歩きスマホ率が低いのも、誰かとコミュニケーションして物事を解決するのも、ベースとなるのは「せっかち」という気質だ。大阪人は「せっかち」だから、歩くスピードがゆっくりになる歩きスマホをする人も少ないし、何か調べものがあっても、まず人に聞いて解決しようとすることも多い。
東京と大阪で消費者の購買行動パターンの違いを調査したことはない。ただ比較をしてみたら、大阪は東京に比べて、知人・友人の情報を参考にする割合が高いと思われる。また参考情報源としてインターネットという指標は東京ほどは高く出ないだろう。
こうして東京と大阪の違いを見るだけでも、マーケティング戦略を立てる上でも、その地域のことをよく把握していないと、絵に描いた餅になってしまうことがわかる。本当にマーケティングを考える人は、理論だけを学ぶのではない。マーケティングとは心理学であり、人間観察学でもあるのだ。
(執筆:新井庸志)