偶然、近所に昔の恋人が越してきて…あの頃の気持ちが蘇ってしまった男性

人間関係

 

■近所に越してきた昔の彼女

 

20代半ばから3年間、あとにも先にも「大恋愛だった」と思える恋をしたと話すのが、キヨアキさん(45歳)だ。相手は学生時代の2つ後輩。卒業後、就職した会社に彼女がOB訪問でやってきた。そして彼女が無事、その会社に就職したところから恋が始まった。


「僕は結婚するつもりでした。ただ、彼女はなかなか承諾してくれなかった。結婚が怖いと言っていましたね。彼女の両親は離婚していたから、そういう影響もあったのかもしれません。ただ、当時の僕は子どもで、そんな彼女の気持ちを理解することができなかったんです」


そのうち、彼女に上司と不倫しているという噂がたった。彼女に真意を聞けないまま、彼は彼女に一方的に別れを告げた。


「ずっと気になっていました。どうしてあのとき、ストレートに上司とつきあっているのかと聞けなかったんだろう、と」


彼女はその後、会社を辞め、行方もわからなくなっていた。地方の実家に帰ったという噂もあったが、彼は確かめようとしなかった。


そしてキヨアキさんは、31歳のときに友人の紹介で知り合った女性と結婚した。激するような恋愛感情はなかったが、結婚するならこの人だという思いはあったという。


「妻は本当にすばらしい女性です。いつも穏やかで、ふたりの子どもたちとも毎日楽しそう。子どもにも怒ることはありません。危険なこと、人の迷惑になることをしたときは、その場でじっと目を見て言い聞かせるんです。あとは伸び伸びさせている。元保育士だから、そのあたりはすごいなあと思っています」


夫であるキヨアキさんに対しても、声を荒げたりキリキリしたりしたことがない。

 

 

■幸せな結婚生活だったのに

 

そんな彼が、家の近所でばったり20代半ばの大恋愛の相手に会ったのは半年前だ。


「ある週末、近くの分譲一戸建ての前に引っ越しの車が止まっていたんです。僕はたまたま犬の散歩で歩いていて。いつもは子どもが一緒なんですが、その日はなぜかひとりだった。大きな家なんですよ。ここに越してきたのかとちょっと見ていたら、中から人が出てきて。それが彼女だった。お互いに時間が止まりました」


彼女の表情が固まっていた。キヨアキさんの脳裏に、あの頃の彼女のさまざまな表情が浮かんだ。どのくらい時間があったのか、その後ろから出てきたのは、かなり年上の男性だった。


「彼がミチコ、と彼女の名前を呼んだけど彼女は気づかず、僕をじっと見つめたまま。僕はあわてて去りました。彼女の視線が背中に刺さったような気がしました」


ドキドキが止まらなかった。彼が住むマンションから歩いて2分ほどの一軒家なのだ。これからも会う可能性がある。どうしたらいいんだろうと彼は頭を抱えた。


「バカですよね。相手も家庭があるし、彼女が僕のことをまだ思っているはずがないのに。僕のほうが無意識に彼女を忘れようとしていたんでしょう。そのパンドラの箱が開いてしまった。そんなふうに感じました」


会わないようにしようと避けているつもりだったが、相手の動向もわからないのだ。ついに3ヶ月前、帰宅途中の電車内で会ってしまった。


「しばらく見つめあっていましたが、覚悟を決めて『今帰り?』と声をかけました。彼女は頷いて、『元気だった?』と。それをきっかけに少しずつ今の生活のことを話して。彼女は再婚でした。僕と別れてから実家に戻って結婚したもののうまくいかずにすぐ離婚。その後、また上京して仕事をしていて、18歳も年上の今のご主人と結婚したのは2年前。『介護結婚みたいなものよ』と寂しそうな顔をしていた……」


彼女は今、離婚後にとった資格を生かして仕事をしているそう。あの頃のことを聞きたいと思いながら、結局、聞くことができなかった。


「ただ、その後もときどき会って言葉を交わしています。先日は、駅近くのバーで軽く一杯やりました。僕も彼女も不完全燃焼のままだったから、このままだと近いうち気持ちが爆発してしまうかもしれない。怖いんです」


映画『隣の女』は、再会したかつての恋人同士が、それぞれ家庭がありながらまた関係をもってしまう。葛藤と苦悩の末、最後にセックスをしながら、彼女は彼の頭を拳銃で撃ち抜き、自らをも撃ち抜く。この映画のキャッチコピーはこれだ。


「あなたと一緒では苦しすぎる。でもあなたなしでは生きられない」

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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