「本当は結婚相手を探したい…」同棲して20年、なかなか離れることができない彼との内縁関係

人間関係

 

■彼の部屋に転がりこんで…

 

ハルエさん(40歳)が、8歳年上の男性と一緒に暮らし始めて20年がたつ。だがこのふたり、一度も結婚の話をしたことがないのだという。


「そもそもは私、大学入学のために上京してきたんですが、20歳のときに田舎の親が事業に失敗、父はそれがもとで体調を崩してそのまま亡くなったんです。当時すでに結婚していた5歳年上の姉が一家で母と同居してくれるようになりました。ただ、私の学費までは出せないということで、私は水商売でアルバイトをしながら大学に通っていたんです」

 

若いから無理もできたが、長続きはしなかった。1年もたたないうちに彼女も体調を崩してしまう。大学は休学し、貯金を崩しながら生活していると、当時、店の客だった男性が相談に乗ってくれた。

 

「それが今も一緒に住んでいる彼です。『アパートを引き払ってうちに来れば?』と言ってくれて。とにかく体がきつかったので、その言葉に甘えました。そのまま今に至る、という感じなんです(笑)」


彼女は彼のおかげで元気になり、彼に借金をして学費を払い復学した。大学卒業後は就職もした。


「就職が決まったとき、彼のところを出ていこうと思うと話をしました。彼はもともと私を女性として好きになったわけではない。行き場のない私を助けてくれただけだから。そうしたら彼が『出ていかないでほしい』と抱きしめてくれたんです」


その日。初めてふたりは結ばれたのだという。逆に言えば2年以上一緒に住んでいても、まったく性的な関係はなかったということだ。彼が求めてきたことも一度もなかった。だからこそ彼女は自分が女として意識されていないと思っていたのだが、その日、結ばれたのだからその後は進展がありそうなものだが……。

 

 

■その後も、「ただの同居人」?


彼女はもともと彼に好感をもっていたが、それを機に恋へと気持ちが移っていった。それまでは食事もそれぞれが適当にやっていたのだが、何となく彼の食事も作るようになった。

 

すると彼は「いいよ、今まで通り各自勝手にやろう」と言う。やはり愛されていないのかと思うと、ときどき彼女を外へ連れ出してごちそうしてくれることもある。


「ただ、あの日以来、また男女ではなく、ただの同居人に戻ってしまいました。でも週末になると彼が食事を作ってくれることもある。私の立場はどういうものなのか、まったくわからなくなっていったんです」


だが、そんな思いは就職して忙しくなって埋没していく。遠方でおこなわれた研修で半年ほど家をあけたときも、恋人同士のような連絡の取り方はしていない。研修の終わりが近づいたとき、ハルエさんが連絡すると「帰ってくるのを待ってるよ」と言ってくれた。


「だからといって、帰っても別に大歓迎してくれるわけでもないんですが(笑)」


彼の気持ちがわからないから、彼女は外で恋愛したこともある。それでも結局、恋が終わると彼のもとへと戻っていった。彼女にとっても彼はすでに「家族」のようなものになっているのだろう。


「5年ほど前、私ももう35歳だし子どもがほしいから結婚相手を探したいと彼に言ったんです。そうしたら『わかった。でも本当はずっとここにいてほしい』と。でも結婚する気はないんですよね、彼は」


結婚相手を探したが、彼女自身、彼との兄妹のような「生活」が心地いいのだろう。なかなか新たな生活には踏み切れなかった。

 

3年前、彼女は婦人科系の病気で入院、手術を余儀なくされた。彼は毎日、病院に来て面倒を見てくれたという。

 

「そのとき彼は私との続柄を“内縁関係”といったそうです。結婚という形をとるつもりはないけど、彼の意識としては内縁関係みたいですね」


病気の予後がよくなく、会社を辞めざるを得なくなったときも彼は淡々と「いいじゃない、ここで生活していればいいんだから」と言った。

 

「安心して仕事を辞め、今はアルバイトで自分のお小遣い程度を稼いでいます。生活費は彼が全部出してくれている。私は自分の分の家事をやるだけ」

 

不思議な関係ではあるが、やはりお互いに信頼関係はあるのだろう。彼は言葉にはしないが、彼女を愛しているように思われる。女としてというより、ともに生活をする人として。
こういう同居生活、こういうパートナーシップがあってもおかしくはない。

 

「彼に外に女性がいるとも思えないんですよね。もともと性的な欲求が極端に低い人なのかもしれない。私も以前はともかく、今はこういう生活でもいいのかなと思うこともあります。でもときどき、女として愛されたかった、きちんと結婚もしたかったと考えることもあって。まだまだこれでいいんだとは言い切れないんですよね」

 

この先、ふたりがどうなっていくのか、彼が定年になったときどうするのかはわからない。ただ、ふたりの間には目に見えない細い、しかししっかりとした糸がきちんと張っているような気もするのだ。何かのきっかけで、ふたりが心をさらし合って話し合えるときが来たら、いちばんいいのかもしれない。

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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