島田紳助の提言「ネットで悪口を書くときは名前を入れましょうよ」は、もはやピントのズレた戯言(たわごと)なのか?

コラム

 

歌手のmisonoが2月10日、YouTubeチャンネルで、2011年に芸能界を引退した島田紳助さん(63)が出演する動画の後編を公開。ネット上で見られる匿名による批判について、紳助さんが自身の考えを示していた。その内容は以下のようなものである。

 

「なんで他人に(悪口)を言われなきゃいけないのか」

 

「ネットで意味不明の悪口書くときは名前を入れましょうよ。便所の悪口みたいなことを書いていると、あなたの人生が腐ってしまいますよ」


「人に悪口を言うときは名を名乗れ!昔のサムライは名を名乗った。不幸せになりますよ。名を名乗りましょう。それが幸せに生きる道です!」

 

さて。聡明なるcitrus読者の皆さまは、この元お笑い界の重鎮がネット住民らに飛ばした檄を読んで、どうお感じになったことだろう。

 

一応「コラムニスト」の肩書きを持つ、ゆえに他人の「悪口」であっても「称賛」であっても「暴露話」であっても、すべて記名で書くことを職業柄から義務付けられている、つまり“個人炎上”のリスクと常に隣り合わせ状態な私からすれば、正直なところ胸の空く想いであった。

 

Facebookのユーザーが年々高齢化しているとはよく言われるが、Facebookは実名登録が基本とされているからか、記名で悪口を書き込む勇気のある人も少なく、総じてコメントは慈愛に満ちている──だから、年輩者も(比較的)安心して利用できるのではないか。見方を変えると、年輩者は若い世代ほど「無記名でネット上に気まぐれな悪態をつく文化」に慣れていないのかもしれない。ただ、ヤフコメに嬉々として悪口を書き込んでいるのは意外と中高年世代だったりする……とも聞きますけど(笑)?

 

ちょっと前の話になってしまうが、こんなことがあった。お笑いコンビ『ハライチ』の岩井勇気(33)のツイッターに「東出昌大の不倫について一言猛毒をお願いします」と一般人が問いかけた。それに対し、岩井は「奥さんが騒いでいないのに周りが騒ぎ立てるのは余計なお世話。近所の噂好きのおばさんと一緒。面白がれる、人の不幸を常に探している自分がいるということを自覚してほしい。貴方含めね」とピシャリ。その後、その一般人は当該ツイートを削除。すると、岩井は「猛毒を欲しておいて、自分に降りかかった時、ツイートを消してブロックされる意味がわからない。願いが叶ったんだからすごく喜んで欲しい」とつづった。

 

紳助さんが主張するところの「人に悪口を言うときは名を名乗れ!」は、たしかに正論中の正論である。が、インターネットというツールがここまで発展・肥大化してしまった昨今、そういった「正論」を振りかざし時流を中央突破するのは茨の道──非現実的でもある。「無記名の悪口」は、もはや現代人の一種の毒抜きのような機能を(トイレ代わりに?)果たしている側面は否めず、実際「趣味はヤフコメのカキコミ」と公言する、見た目大人しそうなサラリーマン風のおじさんとも私は出会ったことがある。

 

したがって、他人の悪口を「自分に降りかかってこない」安全な場所から書いたり読んだりしながら「毒抜き」をしているたぐいのヒトたちに今さら文句を垂れる気はない。しかし、せめて「その猛毒が万一自分に降りかかった時、ツイートを消してブロックする」ようにすごすごと退散を決め込むのだけは、あまりにもみっともなさすぎだからやめてほしい。いくら「一般人」だとしても、だ。

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