筋肉が溶けだす恐怖のフィットネス

コラム

 

2011年1月、米フロリダ州オーランド。ある朝…… いつものように目を覚ました女性、Mさん。


しかし体に異変が……なんとベッドから体を起こせない! 腹筋にまるで力が入らなかった。彼女は転がるようにしてなんとかベッドを出た。手足にも、力が入りにくい……風邪かと思ったが熱はない。そして、気がついた…… なぜか腹部が腫れている! 一体なぜ?


当時彼女は2日に1回はジムに通っていた。ハマっていたのが「クロスフィット」。「走る・持ち上げる・跳ぶ・押す……」といった『日常生活で行う動作』をベースにした強度の高いエクササイズ。そのおかげで、普段の彼女の腹筋はバッキバキに。しかし、この日はぽっこりお腹。実は過度のエクササイズによる、非常に危険な状態だったとは知る由もなかった!


彼女の仕事は、雑誌や広告のスタイリストだったが、仕事中、さらに明らかな異変が!トイレで用を足すと……尿がコーラのように茶色くなっていた。なんとか、家へ帰ったが……数時間後、ルームメイトが倒れている彼女を発見。すぐに病院へ運ばれ、彼女は入院する事に。翌日、血液検査の結果が出た。


彼女は横紋筋融解症だった。横紋筋とは、体の運動をつかさどる筋肉。この筋肉が何らかの原因で損傷し、筋細胞が壊死してその成分が血液中に流れ出ることで起こるのが横紋筋融解症。それが腎臓の働きを阻害し、やがて、腎不全を引き起こす。


Mさんは異変が起こる前日、新しいトレーニングをしていた。それは初めて扱う器具を使った腹筋運動。


その最中……妙にだるさを覚え始めた。それでも、なんとか耐えてこの運動をやりきった。実は、こうした過度なトレーニングを行うと、筋肉を損傷してしまう可能性がある。結果、この病を発症してしまったと考えられた。重症の場合には、死に至ることもあるのだが、Mさんは症状も軽く、生理食塩水や尿のアルカリ化を促す薬剤の投与により、1週間の入院で回復することができた。

 


■横紋筋融解症で重症になったケースも

 

 

幸い、Mさんは軽症だったが、こんなケースも……。米ロサンゼルスに住む、ある女性。


彼女はある日、友人に誘われフィットネスの体験コースへ。それは…… 暗闇の中、音楽と照明にあわせ、サイクルマシーンを漕ぐフィットネスだった! 彼女も最初はノリノリだった。しかし、日頃運動していない彼女は、15分もするともう太ももはパンパン。

疲れてしまい、一度腰を落としたが、トレーナーやトレーニング仲間、その一体感に飲み込まれ……45分のトレーニングを彼女もやりきった。しかし彼女はその後、横紋筋融解症になってしまう。病院に搬送されたが……両太ももの筋膜切開手術をうけることに。


しばらく歩くこともままならなくなり仕事も休職。6か月の間、苦しいリハビリをしなくてはならなかった。とにかく、トレーニングで一番大切なのは、自分に合った適度な運動!

 


■食べ物でも発症する横紋筋融解症

 

 

このような横紋筋融解症、実は食べ物でも起きる。2016年8月、香港で50代の女性が……。さらに9月には30歳の女性が相次いで、横紋筋融解症を発症した。


そして、2人の家族に聞き取り調査をしたところ、なんと2人は発症直前に同じものを食べていたことが判明! それは、なんとザリガニ料理だった!

 

ここ数年(2019年1月時点)、香港などでは「ザリガニ料理」がブームになっている。今回の症例によりザリガニが調査されたが、横紋筋融解症を引き起こす毒素のようなものは、なにも発見できなかった。香港衛生署では『一度にザリガニを食べ過ぎないように』といった通達を出したが、実は魚介類を食べた後、原因不明の横紋筋融解症を発症する事例は世界各地で起きている。


発症例は主に淡水魚やザリガニ。最初の発生場所の地名をとって「Haff(ハフ)病」と呼ばれているが、原因毒素はいまだ特定されていない。


気を付けたい横紋筋融解症。運動後、異常な脱力感、あまりに激しい筋肉痛、そして何より茶色っぽい尿が出たりしたら、すぐに病院へ! (2019年1月8日 ON AIR)

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