「子どもにどう振舞ったらいいのか」"家族"になじめない夫の悲哀

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■妻と子の関係を見て


結婚して7年、5歳と2歳の子がいるタクマさん(38歳)。現在、子どもたちは保育園に預け、妻は時短と在宅勤務を組み合わせた働き方をしている。


「家庭は妻のものだとつくづく感じます。八面六臂の活躍ってこういうことを言うんだろうなあと。僕は出勤が早いので、保育園には連れていけないけど、ときどきお迎えは行きます。子どもたちを連れて帰ると、妻はしっかり夕飯の準備をしている。そこからは子どもたちを風呂に入れて、早く寝かせてとあれこれ指図を受けながら動いているんですが、ときどき、こういうことに僕は向いてないなあと思うことがあるんですよね」


とはいえ、向き不向きを言っている場合ではない。ふたりで幼い子どもたちをめんどう見なければいけないのだから。もちろん、タクマさんもそれがわかっているから妻の指図に従ってはいるのだが……。


「妻と子どもって、セットなんですよね。3人の世界が確実にできあがっている。子どもが泣こうがワガママを言おうが、妻はすべて受け止めて流して言い聞かせて、と一連の言動によどみがないんです。僕はそうはいかない。子どもがイヤだと言えば戸惑うし、泣かれたらパニックになる。単に一緒に過ごす時間が短いせいだけなのか、お腹の中でじっくり育てた母と子の絆にはもともとかなうはずもないのか、そのあたりはよくわかりません。ただ、どこかで疎外感があるというか、母子の世界に入り込めないものを感じるのは確かです」


妻のことも、子どもたちの母親という目でしか見られなくなったという。

 

 

■どうふるまったらいいのか


彼が心の底にもっている違和感に、どうやら妻も気づいているようだ。


「あなたは家族が嫌いなの? と言われたことがあるんです。好きとか嫌いとかではないんですけど、妻にとってはそう思えるんでしょうね。同い年の妻は“いい人”なんですよ。つきあって1年半くらいしたら、私は子どもがほしいので、もし結婚したくないなら早く言ってねと言われた。そんなことないと答えたら、じゃあ、結婚しましょうって。彼女がどんどん進めて、僕はそれに従って。イヤじゃなかったですよ。こうやって家庭ができていくんだな、僕もこれで一人前かなあなんて思ってた」


妻とふたりだけのときはそれでよかった。居心地も悪くなかった。お互いを尊重しながら生活している感覚があった。だが、子どもができてからそうではなくなったのだという。


「妻が子どもべったりで自分のことをかまってくれなくなったと、いじける男性がいるでしょ。僕もそういうタイプなのかと考えたんですが、どうも少し違うんですよね」


妻の関心が自分になくなっているのは、子どもが小さいからしかたがない。彼が思うのは、むしろ自分が妻子にうまくコミットできないことのようだ。


「母親は自分の体内で子どもが大きくなっていくのを実感できる。妊娠した時点で母親であることを自覚できる。でも男はそうはいかない。最初にこの世に生まれた命に対して驚き、おののいて、その生物が人として育っていくのをただひたすら畏れ多いものと眺めるしかないんです。うまく父親になっていける男性のほうが多いんでしょうけど、僕はいまだに子どもに対してどうふるまったらいいかわからない場面がある。妻はそれを『努力不足だ』と責めるんですが、努力でどうにかなることでもないみたいなんですよね」


タクマさん自身、困惑しているようにも見える。実際、カウンセリングにも通ってみたが、彼の根本的な畏れのようなものを理解してはもらえなかったという。


妻にリストラされない限り、努力は続けるとタクマさんは言う。「父親として」にがんじがらめになりすぎず、彼らしい子育てをしていく選択肢もあるのかもしれない。
 

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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