【感動】電車内で「最後になるから今すぐ電話すべき」と話す老夫婦 夫が周りの迷惑になると電話をためらっていたところ…

コラム

 

2016年12月。佐賀県で暮らすSさんはいつものように電車に乗っていた。そして、ある会話が聞こえてくる。

 

それは、近くに座っていた老夫婦。声を潜めている会話が、かえって気になった。妻が夫に言っていたのは……「最後になるから今すぐ電話したほうがいい」という内容のもの。聞いてはいけないと思いながらも聞こえてくる、ただならぬ様子の会話。夫のお父さんが危険な状態で、今すぐ電話をかけるべきだと妻が説得しているようだった。

 

そんな一大事にも関わらず、周りの迷惑になると、頑なに電話をためらうご主人。

 

なんて真面目な人なんだろう……さんはそう思った。実は彼は大学病院で働く看護師。末期がん患者を診る緩和ケア病棟を担当し、何人もの患者を看取り最期に間に合わなかった家族の姿を見てきた。

 

だから後悔だけはしてほしくない。やっぱり「電話してください」と声をかけようと思ったその時!

 

同じ乗客の女性が老夫婦に「電話した方がよかですよ」と声をかけたのだ! 周りの乗客も、この様子が気になっていたのだ! こんな一大事に乗客の迷惑を気にするご主人の何か助けになりたいと思っていたに違いない。それでも申し訳なさそうに「すみません」と言って電話をかけたご主人。

 

そして、夫は自分の思いをしっかりと、はっきりと話し始めた。

 

夫「おやじ、おやじが一生懸命働いてくれたけん、俺らは飯ば腹いっぱい食えて、ひもじか思いばせんじゃった。心配せんでよか、みんな元気やけん……本当に、本当にありがとう」

 

その声は電車内に響いた……静まり返る車内。苦情を言う者など1人もいなかった。そして駅に着くと……夫婦は何度も頭を下げながら足早に降りていった。

 

乗客の協力で病院の父に電話で思いを伝えることができた夫婦。電車内でのマナーが問われる今、みんなの優しい心が伝わったできごとだった。(2020年11月3日OA)

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