3月28日に最終話（第12話）が放送された、菅田将暉さん主演の月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』（フジテレビ系）。この最終話の時系列とepisode表記、そしてモヤモヤした終わり方について、『Smart FLASH』（光文社）でドラマ批評連載を持つ筆者が考察します。

 

 

■続編をどうしても作りたいフジテレビの強引な手法？ 

 

累計発行部数1500万部を超える同名人気漫画を実写化した『ミステリと言う勿れ』。

変わった性格ながら飛び抜けた観察力や推測力を持つ大学生・久能整（くのうととのう／菅田さん）が、事件の謎を解きつつ人の心をも解きほぐしていくという新感覚ミステリーです。

そんな本作、主に一つの事件ごとに “episode” で区切られており、話数に対するepisodeの割り当てと世帯平均視聴率（※ビデオリサーチ調べ／関東地区）は次の通り。

 

第1話／episode.1　13.6％
第2話／episode.2前編　12.7％
第3話／episode.2後編　13.2％
第4話／episode.3　13.3％
第5話／episode.4　10.0％
第6話／episode.5前編　10.2％
第7話／episode.5後編　12.3％
第8話／episode.6前編　10.6％
第9話／episode.6後編　11.6％
第10話／episode final　12.0％
第11話／episode.2.5前編　11.1％
第12話／episode.2.5後編　11.2％

 

このように一度も一桁視聴率に落ちることなく、全話の世帯平均視聴率は11.8％を記録するヒット作になりました。

さて、この一覧を見て、なぜ第10話が「episode final」で、実質的な最終章となる第11話と第12話は「episode.2.5」となっているのか、気になっていた方も多いはず。

それは第10話が劇中の時系列で言うと最も後の話を描いたものであり、第11話と第12話は時間をさかのぼり、「episode.2」から続く話になっているためです。

最終話となった第12話は2部構成となっており、前半は整が東京へ帰る新幹線の中で、隣の女性客が読んでいた手紙に不穏なメッセージが隠されていることに気づき……というストーリーが展開。後半は、「episode.2」で描かれたバスジャック事件の主犯だった犬堂我路（永山瑛太）がメインで展開しました。

ちなみに「episode.2.5」という表記は原作を踏襲したもの。原作では「episode.2」は単行本1巻・2巻に収録されていますが、「episode.2.5」はそこから飛んで単行本6巻に収録されており、こちらでも時間をさかのぼって語られていました。

ただ、ここからがさらにややこしいのです。確かに原作の「episode.2.5」は、我路が姉（ドラマでは妹）の死の真相を確かめるべく、ある猟奇連続殺人事件に関わり、その後姉と恋仲だったと思われる相手を訪ねるという話で、ドラマでも同様のストーリーが描かれました。

 

しかし、実は原作の「episode.2.5」には主人公の整はほぼ登場しません。では整が新幹線で女性客の手紙の謎を解くストーリーはなにかというと、原作の単行本2巻に収録されている「episode3」に該当するお話だったんです（ドラマの「episode3」とはまったく別の話）。

どうしてこうもややこしいことになってしまったのか？ ……ここからは筆者の考察です。

制作のフジテレビは、『ミステリと言う勿れ』の続編を作りたいという気持ちが強く、しかも原作でも人気の高い我路を続編で絶対に登場させたいと考えていたのでしょう。

そのため、ドラマ最終話は我路メインの「episode.2.5」にして、続編を匂わせるラストにしたかった。……が、原作の「episode.2.5」には整は登場しないため、原作内の時系列的に「episode.2.5」とほぼ同じころを描いた整が新幹線内で謎を解く話を、強引に最終話に持ってきたのではないでしょうか。

 

いずれにしても、ドラマの最終話にもかかわらず、主人公の整のストーリーは原作で言うところの「episode3」となっており、人気ドラマのフィナーレらしからぬ、地味でこじんまりとした話になっていました。

整が新幹線内で手紙の謎を解くその話は、『ミステリと言う勿れ』らしいストーリーでしたし、整のキャラクターの “味” も出ているので個人的には好きなんですが、ダイナミックさやスリリングさに欠けるため、コレを最終話で持ってくるか？ と思ってしまいました。

 

とは言え、主演の菅田さんも本作の続編にはかなり乗り気なようなので、続編が実現する可能性は高いでしょう。最終話のモヤモヤした消化不良感を続編できっちり解消してもらいたいものです。