湯たんぽ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 03:05 UTC 版)
歴史
中国では「湯婆」(tangpo)と称されていた[1]。「婆」とは「妻」の意味であり、妻の代わりに抱いて暖を取ることを意味している。「湯婆」のみで湯たんぽを表すが、そのままでは意味が通じないために日本に入ってから「湯」が付け加えられ「湯湯婆」となったとされている[5][6]。
日本には室町時代に中国から伝来した[1]。日本で最初の文献は1484年(文明16年)の『温故知新書』及び季弘大叔の『蔗軒日録』とされている[1]。また日本で現存する最古の湯たんぽは岐阜県多治見市小名田で出土した「黄瀬戸織部流し湯婆」である[1]。栃木県日光市の輪王寺には徳川綱吉が使用したという犬型の湯たんぽが存在している[7]。江戸時代の湯たんぽは錆びないように素材に高価な銅を用いたものが多く、暖をとるために湯を使うことも難しかったため庶民が使うことができるものではなかった[1]。もとは医療具であるが関西地方では酒の燗のための器具のことも意味するようになり、江戸時代には酒器に転用された例もある[1]。
陶磁器製の湯たんぽは文政年間には存在したが、本格的に作られるようになったのは明治期からである[1]。大正期になると波型のトタン製湯たんぽが普及[1]。しかし戦時中は金属が貴重となったため、陶器製のものが使われるようになった。現在ではプラスチック製やポリ塩化ビニル製のものが湯たんぽの主流となっているが、金属やプラスチック製と違い、陶器製は保温性が良く遠赤効果があるとされている。
1990年代になってから、保温性の高い液体をプラスチックの容器内に密閉し、電子レンジで加熱することにより湯水の出し入れをしなくてもよいものが登場したが、加熱のし過ぎによって容器が破損し、内部の高温の液体が漏れ出して火傷を負う事故があったため、メーカーのADEKAが利用者に商品の回収を呼びかけている[8]。
2007年(平成19年)からは原油価格の高騰によって省エネルギー性が注目され、商品数・売上が増加している[9]。
- ^ a b c d e f g h i j k 資料館通信第71号、ふじみ野市立上福岡歴史民俗資料館、ふじみ野市立大井郷土資料館、2020年5月21日閲覧。
- ^ a b c d e ゆたんぽでの低温やけどを防ぎましょう、消費者庁、2020年5月21日閲覧。
- ^ a b c 江上京里, 「「温罨法」 の統合的文献レビュー」『日本看護技術学会誌』 7巻 2号 2008年 p.4-11, 日本看護技術学会, doi:10.18892/jsnas.7.2_4、2020年5月26日閲覧。
- ^ a b 電子レンジ加熱式湯たんぽによる加熱時の 火傷事故の再発防止について(注意喚起)、独立行政法人製品評価技術基盤機構、2020年5月21日閲覧。
- ^ 湯たんぽ - 語源由来辞典
- ^ 余録:「湯たんぽ」の語源について柳田国男は… - 毎日新聞 2011年11月18日 東京朝刊(2011年12月2日時点のアーカイブ)
- ^ 『湯たんぽの歴史』 - 湯たんぽネット(2008年11月20日時点のアーカイブ)
- ^ 「電子レンジで温める湯たんぽ」の商品回収について - (株)ADEKA 2007年10月15日
- ^ 『<湯たんぽ>原油高で女性らに人気 年末ギフトにも登場』 毎日新聞 2007年11月24日付配信(2007年11月28日時点のアーカイブ)
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