「給食に楽しさを求めちゃいけないと思ってる」という子も。コロナ禍の子どもたちに、心身の影響は? 医師たちが懸念する「神経性やせ症」の実態。

 

ジャーナリストで東海大学客員教授の岸田雪子氏が子育て周辺の課題を考える連載「Bloom Room」。笑顔の “つぼみ” を花開かせる小部屋です。今回は「コロナ禍の子どもの心」について。

 

知り合いの校長先生にお声かけいただき、先日、とある公立小中一貫校の「黙食」の時間にお邪魔しました。
校舎内では各教室の窓は開け放たれ、廊下側のドア2ヶ所も開放されています。学校の普通教室が構造上、換気がしやすいことを改めて実感していると、子どもたちは、配膳の時間からシーンと静かに並んで給食を受け取り、次々と、黒板をむいた自分の席についていました。
前方に立つ先生が「いただきます」と声をかけると再び、教室は静まりかえり、カチャカチャ、カチャカチャ、とスプーンが皿にあたる音だけが響いていました。

 

私が覗かせて頂いたのは、小学1、2年生と、中学2、3年生の教室でしたが、しばらくして、笑顔の子どもが一人もいないことに気がつきました。もちろん、私が見た範囲のことではありますが、子どもたちの目に映るのは、お友達の背中と、黒板と、机の上のお食事だけですから無理もないのかもしれません。お食事はとても美味しそうで、モリモリ食べている子もいるのですが、こうした子どもたちの黙食が毎日、もう2年半以上続いているという現実に、胸が苦しくなる思いがしました。黙食終了後、女子中学生のひとりは私に、
「もう慣れたかな。給食に楽しさを求めちゃいけないって思ってるから」
と話していました。

 

長引くコロナ禍は子どもたちの心に、どんな影響を与えているのでしょうか。
国立生育医療研究センターは先週、全国30の医療機関と協力した調査結果を公表し、「神経性やせ症」の子どもの増加が続いていると、警鐘を鳴らしました。
「神経性やせ症」は、食事をとれなくなる摂食障害の一つで、極端に食事を制限するなどして体重が減少し、進行すると日常生活に支障をきたすこともあるものです。本人は病気ではないと否定することも多いため、医療機関を受診するタイミングが遅れがちです。周囲の大人が食欲や体重の減少に気を配り、深刻になる前に内科や小児科などを受診することが大切になります。

 

 この「神経性やせ症」の増加と、学校での黙食が関連があるかどうかは分からないそうです。調査を担当した医師のひとりに話を聞いたところ、コロナ感染拡大による不安や、生活の変化によるストレス、行事の中止などのほか、「『コロナ太り』という報道やSNSの情報に、子どもたちが過度に影響を受けたのではないか」と指摘していました。

先日には、不登校の子どもの数が昨年度は24万人あまりと過去最多に上り、コロナ禍の環境の変化による影響が指摘されたばかりです。実際、「頭が痛い」「お腹が痛い」「朝、起きられない」などといった不調を訴える子どもが増えている、という声は、学校現場や医療機関からも上がっています。
コロナ禍の不安感や、環境の変化、行動制限による子どもたちの心と発達への影響について、政府には本格的な調査検証を行なってほしいと思います。

 

 冒頭に紹介した小中学生たちからは、黙食の後、こんな声も上がりました。
「食べ終わったらマスクをして、しゃべっていいことにしてほしい」
「ちゃんと黙っているから、黒板に向かって座るんじゃなくて、友達の顔だけでも見えるように座り位置を変えてほしい」などなど。
この冬、子どもたちの体も、心の育ちも守るために何が必要なのか。「これまでやってきたから」だけではない、根拠と納得感のある感染対策が求められているように思います。


 

 

岸田雪子さんは、子育てと介護のダブルケアの日常を綴ったブログも更新しています。
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