「Z世代の約5割が子どもを欲しいと思わない」…その理由から見えてくる “子育て観” の変化

 

東海大学客員教授の岸田雪子氏が子育て周辺の課題を考える連載「Bloom Room」。笑顔の “つぼみ” を花開かせる小部屋です。今回は「Z世代の子育て観」について考えます。

 

「将来、子どもは欲しくない」という声がZ世代の約5割に達した。……そんなBIGLOBEの調査『子育てに関するZ世代の意識調査が話題となりました。「子どもがいなくてもいい」ではなく、「欲しくない」とキッパリ断言する、その理由はどこに。調査内容を読みますと、主にこのようなものでした。

 

◎子どもが欲しいと思わない理由は?
 お金の問題  ・・・17.7%
 お金の問題以外・・・42.1%
 両方     ・・・40.2%

 

◎お金の問題以外で子どもが欲しいと思わない理由は? (複数回答)
 育てる自信がないから            ・・・52.3%
 子どもが好きではない、子どもが苦手だから  ・・・45.9%
 自由がなくなるから             ・・・36.0%
 日本の将来に期待ができず、子どもがかわいそう・・・25.0%
 子どもを育てにくい世の中だから       ・・・20.9%

 

「欲しくない」理由は、「お金の問題」という回答は比較的に少なく、「お金以外」という回答の半分以下です。およそ8割が、「お金だけじゃ解決できません」というメッセージを送っていると受け取れます。

 

では「お金以外」の理由はというと、そのトップが「育てる自信がない」。それだけ「親」という役割が「高いハードルが課されるタスク」と受けとめられ、自分たちの置かれた環境とのギャップを感じているように見えます。

 

思えば、Z世代が生まれた1990年代後半以降は、出生数の減少が際立ったいわゆる「1.57ショック」のあと。少子化が加速する一方で、充分な対策がとられなかった時代の真っ只中です。子育てが親の肩に重くのしかかって自由に働けず、キャリアが断絶したり、預かり先も見つからない……そんな「優しくない社会」に触れるうち、「リスク回避」としての「子育て回避」という選択肢をとる、ということであれば、それは一種の自己防衛なのかもしれません。子育てが「リスク」ではなく、個人の「幸福感」の延長にあると実感できるには、これまでの少子化対策の延長線上では解決しないことは明らかなのでしょう。

 

もうひとつ。この世代の特徴として、ひと家庭あたりの子どもの数が減っているぶん、子どもひとりにかけられる費用の大きさも、体感済みである、とも言えそうです。先の調査結果からも、自身の子ども時代に「習い事や進学をさせてもらった経験」の大きさは伺えます。

 

◎自身の子ども時代に習い事はある程度、させてもらった  ・・・83.5%
◎経済面で、進学はある程度、希望通りさせてもらった   ・・・87.9%

 

◎将来、子どもには自身と同じかそれ以上に習い事をさせたい・・・84.2%
◎将来、子どもには自身と同じかそれ以上に進学させたい  ・・・87.5%

 

今や大学進学率が上がり、大学の授業料は90年代の1.5倍に上昇。奨学金を使う大学生は90年代の2倍以上に膨れ上がっています。そんな中、「自分がさせてもらった習い事や進学は、子どもにもさせてあげたい」というZ世代たちの希望は、ますます「ハードルの高いタスク」となり、「今はその自信を持てない」……そんな実感につながっているのではないでしょうか。

 

新しい命を生み出すことは、「日本経済を縮小させないため」でも、「社会保障制度を維持するため」でもない、あくまで「個人の幸福」に直結する一大決心です。


過去30年近く遅れてしまった、いわゆる “少子化対策” が、よりフェアに、お金だけではない “安心” で “幸せ” な環境づくりに軸足を移すことができるのか、若い世代の目も注がれています。

岸田雪子さんは、子育てと介護のダブルケアの日常を綴ったブログも更新しています。
よろしければ、是非ご覧になってみてください。
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