慢性的な出版不況にもかかわらず、対20〜40代女性実売№1と、絶大なる支持を得ているらしい生活情報誌『サンキュ!』のネット版が、「大食いタレント実践の技も! ビュッフェ、バイキング、食べ放題の攻略法」なるタイトルのインタビュー・コラムを配信していた。
「食品ロス」が深刻な社会問題となりつつある昨今、「食べ放題」を語る記事のおおよそが「ちゃんと食べきることができるだけの量を皿に盛りましょう」的な、“ヒトとしての倫理観”へと訴えかける論調にベクトルを向けているさなか、大食いタレントの技を随所に取り入れた、珍しく(?)“実践的”なノウハウが複数提示された、なかなかに読みごたえたっぷりな内容である。筆者を確認してみると、All Aboutで「散歩ガイド」としても活躍する、私も古くからの親交を持つフリーライターの増田剛己(下関マグロ)さんだった。その「ノウハウ」をザッと挙げてみると、以下のようになる。
・ 食べ放題へ行く前には揚げ物を食べるべし!?
(食べ放題に備えて、朝食を抜いたりするのは逆効果。人間の胃は長時間空っぽにしてしまうと収縮し、たくさん食べられなくなってしまうから。事前に揚げ物などを適量食べておくと、遊離脂肪酸が脳に刺激を与え、空腹感を感じる…のだそう)
・ 料理をすぐ皿に盛るな!
(最初は皿を持たずに店内を観察し、どの料理をどのくらいの量だけ盛るかをイメージするのが大事…なのだそう)
・ 「料理がなくなる」との焦りは禁物!
(お店側は料理の残り状況をしっかりチェックしているので、少々待てば、必ず補充される。冷めた料理を慌てて盛るより“つくりたて”を食べたほうが満足度も高い…のだそう)
・ 肉はできるだけ小さく切る!
(肉は歯ごたえがあるので、小さく切ることでアゴへの負担を減らすのが◎…なのだそう)
・ 「元を取る」という考えは捨てろ!
(「元を取る」にこだわって食べ過ぎてしまい、お腹が苦しくなったりしたら本末転倒。あくまで幸せな気分でお店をあとにすることが重要……なのだそう)
「まずは落ち着きましょう」
──文末で増田さんは、食べ放題に挑む者たちを優しい口調でこうたしなめる。一見ついついスルーしてしまいがちな、シンプル極まりないアドバイスではあるけれど、「食べ放題」とのセールスコピーに心躍らされ、アドレナリンを脳内から分泌させまくり、冷静さを欠いたハイテンションの状態となっている我々にとっては、ぜひ肝に銘じておきたい一言ではないか。そう。増田さんのご指摘にもあるとおり、「計画性を持って、あくまで幸せな気分でお店をあとにすることが重要」なのだ。私もこの境地に達するまで、恥ずかしながら50年近くを費やした。50歳を超えて、ようやく「元が取れなくても(=負けても)いいんだ…」という、当たり前の結論へと到ることができるようになった。
たとえば、私が「食べ放題に挑む」のは、9割以上が「ホテルの朝食ビュッフェ」だったりするのだが、ここで“勝利”してしまった際、のちに押し寄せてくる“ツケ”は、あまりに大きい。「ホテルで朝食」ってことは、仕事にせよプライベートにせよ、その日の午後は外を出歩くケースがほとんどだったりする。そして、観光地然とした“外”は、得てしてトイレの環境が悪かったりする。そんななかで食べ過ぎてしまったがゆえ(=勝利してしまったがゆえ)トイレを頻繁に利用する男は、同行しているクライアントさんや女子にとって、迷惑千万な存在でしかないのではなかろうか? いや、「〜ではなかろうか?」じゃなく、100%「迷惑千万な存在」なんである!