忘年会シーズン──「年末年始はどう過ごされるのですか?」と、本当はどんな「過ごし方」が返ってきても私の実生活には1ミリもの影響をも及ばさない定番の社交辞令を、となりに座る人が代わるたびに繰り返し交わしていると、とある友人男性のひとりが、
「ウチは父子帰省です」
……と回答してきたので、一瞬きょとんとしてしまった。
さて。賢明なるcitrus読者の皆さまは、この「父子帰省」ってやつをご存じだろうか?
私は、子どもがいないのもあるせいか、まったく知らなかった。「ふしきせい」と聞いて、それを脳内で漢字変換することさえできなかった。私のノートパソコンはバージョンが古いので、「hushikisei」とキーボードを打ってみたら「伏木性」と変換された。だが、スマホを使ってYahoo!で検索してみると、「ふしき」と打っただけで「父子帰省」の四文字が一番上に出てきた。つまり、ちまたではすでに、けっこう出回っているワードであるわけだ。
「父子帰省」とは、読んで字のごとく
「お盆や年末年始の時期に妻は家に残り、夫だけが子どもを連れて(おおよそは夫側の)実家へと帰ること」
……らしい。正直、こうすることによってどんなメリットが得られるのか、最初はピンと来なかった。ところが、その友人男性の話によると、
「メリットしかない、もっとも理想的な帰省のかたち」
……なのだという。とりあえずは、彼が主張する「メリット」を以下に挙げてみよう。
・ 仮に“イイ人たち”であっても、元々は他人でしかなかった夫側の両親に妻が気を使わなくて済む
・ やはり、しょせん他人でしかなかった妻に、夫側の両親も気を使わなくて済む
・ お盆や年末年始といったそれなりの長期間、妻が子育てから心底解放される
・ 子どもの面倒は両親がすすんで見てくれるため、夫も地元で遊ぶことができる
・ 普段はなかなか顔を合わせる機会が少ない「父親と子ども」の距離を縮めることができる
なるほど。たしかにメリットは目白押し……だけど、「それじゃあ、妻だけが妻側の実家に子どもを連れて帰る母子帰省も同じではないか」と素朴な疑問をぶつけてみる。すると、
「同じように聞こえて、じつは微妙に違ったりするんですよ。だって、母親は子どもと一緒にいるかぎり、実家に戻っても結局は子どもの世話をしなきゃならないですから」
……と論破された。納得。
今回のこのコラムにかぎっては、私から提言できる“結論”はなにもない。もし、この「父子帰省」が、真に「家族・両親全員をハッピーにしてくれる」のなら……微力ながら“浸透”への手助けをしたいと考え、気まぐれに筆を取ってみた(キーボードを叩いてみた)次第なのであった。