お笑い芸人の東野幸治(52)が2月20日、ニッポン放送の特別ラジオ番組『佐久間宣行の東京ドリームエンターテインメント』に生出演し、なかなかに秀逸な自己分析を披露したようだ。『スポニチAnnex』の後追い記事から、とりあえずそのいくつかを抜粋してみよう。
「大崎(洋会長)・岡本(昭彦社長)体制で、俺、たぶん序列№5ぐらいやなって思って。ある程度は上」(とニヤリ)「だんだんと知らん間に、序列が上がってるんですよね」
(現在はレギュラー番組を12本もかかえているが)「それはフロアディレクターだから何でもできるんです。それはそれで別に、ストレスもないし、楽しくできますから」
(そこまでの人気者なのにCM契約は一本もなく)「俺、気狂ってるんですよ。たぶん、奇跡の人やと思うんですよ。何で仕事やってるんやろうと思って。何の好感度もないのに。だから、ほんまにずーっとフロアディレクターに徹しているから、仕事があんねんなぁって思って」
「どっかで諦めたんです。お笑いでレジェンドになるのを諦めたんです。俺、無理やと。テレビって面白いし、出ておきたいなと思ったんで、自分なりにテレビで居場所を見つけた」]
たしかに「レギュラー番組が12本もあるのにCM契約が一本もない」ってのは、異常と言えば異常な、東野曰く「奇跡」のバランスである。私は個人的に東野の顔・声・髪型が生理的にあまり受け入れられなかったりするのだけれど、さらにはちっとも面白くないとも思っているのだけれど、だからといって、出ていたらチャンネルをすぐ変えてしまったり、大阪のおばちゃんみたいにテレビに向かってツッコミを入れるほどでもない。番組が終わったころには、MC役で出演していようが、ひな壇のガヤ枠で出演していようが、東野の像はキレイさっぱりと脳内から消え失せてくれる。つまり、私からすれば、存在感がとても希薄なのである。
「生理的には苦手なのにもかかわらず、目に入れても痛くはない」「売れっ子なのに存在感は薄い」──よくよく考えてみれば、そういう芸能人は、わりと希有なのかもしれない。そして、いくら売れっ子であっても存在感が薄い芸能人に、たった15秒しかないインパクト勝負のCM仕事が舞い込んでくるはずもない。
「フロアディレクター」なるワードを、東野がどういった意味で自身に使っているのか、正確なところはよくわからないが、一応直訳をネットで調べてみれば、「番組で出演者やスタッフに指示を送る収録現場の進行役」とある。じつに上手い例えだと感心した。まさに“東野そのもの”ではないか。
「テレビは面白い→出ておきたい→自分なりに居場所を見つけた」と、芸能人を続けている動機がとても浅いのもいい。あと、おのれを「好感度がない」と評価できる客観的な目線も、お笑い界のレジェンドになることをスパッと断念した諦めの良さも……。
あの蛭子能収は、テレビの仕事の質に一切のこだわりがなく、「ラクさとギャラ」の費用対効果が高い仕事こそが一番だと公言する。そんな蛭子さんのポリシーにも通ずる部分がある、東野の「仕事に対する熱量の低さ」もまた、一つのプロフェッショナルのかたちなのではなかろうか。これからは安定してテレビに出ずっぱりな東野の一挙手一投足にも、チョッピリ注目していきたい。