特殊詐欺の防止に役立てようと新潟県警が制作した、とあるポスターがネット上で話題になっている。
バストアップ正面カメラ目線のアングルで、ドカンと“いつも”の無表情でニラミを利かせているのは、県警初の安全安心大使も務めるラグビー日本代表で、新潟市秋葉区出身でもある、「笑わない男」のニックネームでお馴染みの稲垣啓太選手(29)。その上には
『コンビニで
電子マネーを買って』は
詐欺
……とのキャッチコピーが。「詐欺」という字は相当に大きな級数で、周囲は爆弾マークで囲われている。さらに、稲垣選手のビジュアルの横には
新潟県警安全安心大使
稲垣 啓太 選手
……と、小さめの級数で肩書きと名前を紹介。まるで指名手配犯のポスターのごとく……っていうか、明らかにソレをパロディー化しようとする意図が見え見えの“確信犯”である。実際、同ポスターの制作に携わった生活安全企画課の左京秀明・安全安心推進室長は、
「指名手配の写真のようにも見えるが、ちゃんと本部長にもお墨付きをいただいています。周囲の受けもいい」
……なんてコメントを、朝日新聞に正式なかたちで寄せている。「特殊詐欺被害は笑えない。(だから)『笑わない男』に一役買ってもらえれば」……みたいな、取って付けたようなフォローも入れてはいるものの、よりによって公僕的立場にある司法警察が、一民間人を捕まえて「指名手配の写真のようにも見えるが〜」と公に向けて言い放ってしまうのも、捉えようによっちゃあ失礼な話ではないか(笑)。
そんな“無礼”を気前良く(おそらく)アッサリとスルーし、地元の詐欺防止運動に貢献しようと頑張る稲垣選手の“健気さ”には本当に頭が下がる思いだが、それにしてもラグビー選手って、誰も彼もがメディア露出する際、謙虚でどんなムチャ振りにも一所懸命応えようとしているなぁ……と、いつも私は感心してしまう。そのサービス精神は、野球選手やサッカー選手とかよりも、確実に“一段上”のステージにある……と、私は思う。
やはり、長い期間、日本ではなかなか注目を浴びることがなかった“不遇の時代”を味わい尽くしてきたからこそ、「メディアでラグビーを宣伝できるありがたさ」をも心底から痛感しているのだろう。「どんなカタチであれ、一人でも多くに自分=ラグビーを知ってもらいたい」という率直な想いが、各選手ともトークからも巨体を揺らしておどける姿からも、真摯ににじみ出ている。
いくらイイひと・個性派揃いとはいえ“賞味期限”ってヤツは、メディア側もけっこう冷徹に計算しているのかもしれない。あと半年足らずで東京五輪だってはじまっちゃうわけだし……。けれど、そんな市場の論理のみを念頭に置いた“大人の事情”に負けることなく、ラグビー日本代表の皆さまには、その人気にあやかっている側を最大限に利活用して、本来の目標である「ラグビー魅力の啓蒙」に、励んでいただきたいものだ……と、野球派の私ではあるけれど、切にそう願っている。