2年前あたりから秘かに、お笑いコンビ『ずん』の飯尾和樹(51)に注目している。
「ぺっこり45度」だとか「ぱっくりピスタチオ」などのギャグで知られており、昨年は年間100日以上のロケをこなしたという。ウィキペディアでは「じわじわとくるナンセンスな笑いを持ち味とする」「共演者や一般人をいじることはあるが、他人を傷つけるネタはしないことも特徴」……と紹介されていた。
どちらかと申せば“遅咲き”な印象だが、もしかすると単に私が(過去の活躍・実績を)最近まで知らなかっただけなのかもしれない。そんな飯尾サンが、新型コロナショックによる外出自粛が続くなか、「昼間からゴロゴロ〜」な自宅生活について、ネット版のスポーツ報知で語っていた。一言一句、じつに味わい深いものがあったで、ぜひ今日はここcitrusでもその一部を紹介しておきたい。
「ボクの仕事はロケが多くて、ロケは全部なくなりました。(中略)1日、スーパーの往復だけで(歩数)が210歩だったことがあります」
「この前、奥さん以外と何をしゃべっているんだと書き留めたら、スーパーに行く時にご近所さんに『どーも』とマスク越しに会釈して、スーパーで『ポイントカードあります』と小声で答え、『袋付けますか?』と聞かれ『付けます』。たった三言しか話していませんでした」
「かみさんが家業で製麺所をやっているので、今はボクが家事担当です。床拭きしていて、フローリングのツバメみたいな形をしている模様を発見して、ヤクルトファンなのでニヤニヤ。(中略)もう4年半住んでいるんですが、小さな発見を楽しんでいます」
「家でゴロゴロすることは得意。20代後半は仕事がなくて床ずれするくらい寝ていました。自分は医療のことに関してはド素人。小学校の理科の実験でもフナの解剖の時、メスで1センチ切っただけで貧血でぶっ倒れました。唯一貢献できることが家でゴロゴロなんです」
どこか仙人めいた達観ぶりをも匂わせる老練なコメントのオン・パレードだ。そもそもからして『ずん』というたった平仮名二文字の、深慮遠謀感にも意味性にも無縁な、音感の心地良い不気味さのみに優れたオノマトペ的コンビ名が、すごくいい。そのボディブローのように効いてくるインパクトは天才的な命名ですらある。
今日歩いた歩数や自宅以外でしゃべった言葉を数えたり、フローリングの模様にツバメを見出したり……と、いささか自虐混じりな「新しい発見」も、このコロナ自粛時代においては貴重な着眼だと言える。そして、なにより「医療に関してはド素人ゆえ唯一社会に貢献できることが家でゴロゴロしていること」と「誰も傷つけることなく」断言し切る潔さが素晴らしい。
決して過大評価なんぞではなく、私はこの『ずん』の飯尾和樹こそが、かつて「無責任シリーズ」で馴らした(故)植木等の系譜を引く「適当なおじさん」の現在現役第一人者である高田純次(73)の後を継ぐ最右翼候補だと、真剣に考える。その頭角を現す“若手”として、飯尾の51歳という年齢は、そろそろ熟成の頃合いなのではなかろうか。