近ごろ、「婚外恋愛」なる行為に走る主婦が増えているという。そんなことが、どこぞの恋愛系サイトに書いてあった。
「婚外恋愛」という言葉が、ちまたへと本格的に出回ったのは意外と昔まで溯り、2002年にテレビ朝日系列の「木曜ドラマ枠」で放送されていたテレビドラマ『婚外恋愛』(出演者:永作博美・堺雅人…ほか)がきっかけ、との説が有力……なのだそう。
「婚外恋愛」とは、読んで字のごとく「既婚者がパートナー以外の人と恋愛関係になって交際すること」であり、「じゃあ、結局は不倫と一緒なんですね」って話になるのだけれど、「不倫」は “片側が未婚者” である場合にも該当するワードで、いっぽうの「婚外恋愛」はあくまで “既婚者同士” が前提となる秘め事に限定される……らしい。
いずれにせよ、カップリングに既婚者が混じっている以上、それはすでに「不倫」と呼んでも差し支えない(=呼ばれてもしかたない)わけだが、なぜか昨今の「お互い結婚しているのに浮気しちゃっている男女」は、自身が継続している(あるいは、過去にしでかした) “禁断の恋” を、頑なに「いや、アタシ(ら)がヤッているのは “不倫” ではなく “婚外恋愛” です!」と主張して譲らないヒト、とくに “主婦” が少なからず……なんだとか。
冒頭で、「『婚外恋愛』なる行為に走る主婦が増えている」と安易に記してはみたものの、はたして「婚外恋愛=(既婚者同士の)不倫に走る主婦」が増えているのか、それとも「自分の(既婚者同士の)不倫を婚外恋愛と言い張る主婦」が増えているのか……そこらへんの正確なニュアンスはよくわからない。
おそらく、ここ数年、メディアを急激に賑わせている芸能人の不倫報道、それに “当事者” たちがネット上で完膚無きまで、サンドバッグ状態のごとくボコられてしまうさまを目の当たりにして、「不倫」という二文字がかもし出す独特の背徳性に対する畏怖が過敏なかたちでインプリントされているのだろう。「婚外」と「恋愛」をハイブリッドした、「不倫」よりはまだいささかポジティブな響きを、自己正当の拠り所にしている側面も、大きいのかもしれない。
だがしかし! 「まだいささかポジティブな響き」に守られた “耳障りの良い造語” があまりに流通しすぎて一般化してしまうのも、それはそれで問題なのではないか? たとえば、「セックス」を「エッチ」と称するのが主流となって、「男女の肉体的なまぐわり」は見る見るうちにポピュラー化していった。さらには「援交」なる略語が生まれ、いわゆる「カラダを売ってお金を稼ぐこと」への罪悪感も希薄になってきて……。
私は、片方であれ双方であれ「既婚者の恋愛関係」は、「婚外恋愛」なんてまどろっこしい表現を使わず、きちんと(?)「不倫」のままで押しとおすべきだと考える。そして、ソレをヤルなら、そのネガティブな響きから「アタシがオレがヤッていることは社会道徳的には許されないことなんだ…」と、自覚しながらコソコソとヤルべきなのではなかろうか。ほんのちょっぴり目先を変えただけのマインドコントロールで “自分への納得” を延命したところで、しょせんヤッっていることは同じなのだから……? ちなみに、私の知人男性が不倫のことをギョーカイ用語風に「リンフー」とアレンジしていたが、こりゃどう贔屓目に捉えても、流行りそうにはないですな(笑)。