聖火ランナー辞退! 控えめな100%の「正論」で世論を牽引するロンブー・田村淳の精密度

 

誰だかの個人の発言をネタにコラムを書く際、とくにそれが政治関連の案件だったりすれば、私はコンパクトに要約されているものより、なるべく“そのまんま”長々と書き綴られているものを参照するよう、こう見えて心がけている。

 
たとえば、1月27日にIOCのトーマス・バッハ会長が、新型コロナウイルスの感染拡大で懸念されている東京五輪・パラリンピックの今夏開催について、中止や再延期を否定し、「どうか辛抱して待ってほしい」と日本国民らに「忍耐と理解」を求めたという報道を受け、その発言に違和感を示すコメントやツイートが相次ぐ……といった騒動があった。が、世界最大級のサッカーメディア『GOAL』(日本版)によるバッハ発言の引用をじっくり読んでみたら、

 

 
「考え得るすべてのシナリオについて、コロナウイルス対策をまとめる必要がある。それにあたり、私たちはすべての機関のアドバイスに頼っている。日本政府、各保健機関、世界保健機関(WHO)、ワクチンの製造業者、すべての専門家と話し合っているんだ。協議をした結果、数あるコロナ対策の中から大会期間中にどの対策が適切かを最終的に判断するのは、時期尚早だと結論付けることができる。アスリート、各国オリンピック委員会、国際連盟、日本、組織委員会、すべての人に忍耐と理解を求めなければならないし、私たちも同じように忍耐強く勤勉でなければならない」

 
……と、「どうしても予定通りオリンピックをやりたいから、日本国民の皆さまは申し訳ないけど辛抱してくださいね」風のニュアンスとはやや違うような気もしなくはない。別に私は猛烈なバッハ信者でも急進的なオリンピック推進派でもないのだけれど、こうした世論の風向きを一気に変えかねない、ターニングポイントとなる発言を慎重かつ正確に読み解くことはとても重要だと思う。

 
同じオリンピックネタではあるが、お笑いコンビ『ロンドンブーツ1号2号』の田村淳(47)が2月3日、自身の公式YouTubeチャンネルで東京五輪の聖火ランナーを辞退する旨を発表したことが話題になっている。多くの“まとめ記事”では、森喜朗東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会会長の「人気タレントは(広々とした)田んぼで走ったらいいんじゃないか」発言を“対(つい)”として扱い、それに田村淳が不快感を示して“辞退”したような論調で〆られているのだけれど、コレもまた精査してみると、やはり「ややニュアンスが違っている」と言うか、もう少々客観的な視点での冷静な批判であった印象がある。とりあえずは、私がネット上で検索したかぎり、もっともそこらへんのくだりについて詳しく書かれていた『HUFFPOST』(日本版)から、田村淳の発言を引用してみよう。

 

 
「『オリンピックはコロナがどんな形であっても開催するんだ』という、ちょっと理解不能な発言をされていました」

 
「聖火ランナーをやると人が集まるからという理由で、タレントは田んぼに聖火を持って走ることをですね、森さんは推奨されていたんですけど。こういう発言、冗談なのか何なのかは分かりませんけども、ポロッとしてしまうところが昔から森さん変わってないなと思いますし、こういうところが人の気持ちを削ぐというか、僕はどうしても同意しかねる。田んぼをやっている農家の方にも失礼」

 
「(ランナーに任命されたことへの感謝を口にした上で)聖火ランナーは辞退させていただこうと思っています」

 
「オリンピックを開催することは願っていますけども、延期派です。いずれまたオリンピックがこの東京で開催されることも強く願っています(とした上で、新型コロナの終息が優先だと意見を述べた)」

 
どの角度からも攻撃のしようがない、さらには「農家の方」や東京五輪関係者、それにアスリートへの気配りもきちんと行き届いた完璧なロジックである。運営側からも「我々にとって最悪の流れ。おっしゃっていることはごもっともな話で、こちらも何ひとつ反論できないのが非常に歯がゆいところなのですが…」みたいな困惑の声も漏れていると聞く。本案件にいたっては、読み解けば読み解くほど実感する。このヒトって、本当に頭がいいんだぁ……と。