『J CASTニュース』が『「オンライン飲み」はなぜ廃れたのか「逆にストレスだった」参加者に聞いた本音』なるタイトルの記事を配信していた。冒頭のリード文には、
新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活様式は大きく変わった。集団感染のリスクを下げるため、「密」を避けて行動することが呼びかけられて1年が経つ。政府や各企業は在宅ワークを推奨し、社内や取引先との「オンライン会議」はすっかり定着した。
一方で、いつの間にか聞く機会が減ったのが「オンライン飲み」だ。一度目の緊急事態宣言が出た1年前と比べると、すっかりブームが去ってしまった印象だが、その理由はどこにあるのだろうか。
……とある。たしかに、最近めっきり誘われなくなりましたねぇ……オンライン飲み。もはや「ああ…そんな言葉、昔流行ったよね?」レベルのトーンダウンっぷり? まるで、たまたま大ブレイクしてしまった一発ギャグで新語・流行語大賞候補に選ばれたお笑い芸人が、翌年に急失速してしまうさまを見ているかのような勢いだ。同記事では「廃れた理由」に、
・居酒屋とかで3〜4人で飲むと、『あっ、今からこの人が話すな』っていう空気感が分かるが、オンラインだとその感覚がつかめないので、声が重なる機会が多く、それがストレスになる
・お店で話しているわけではないので終電もない代わりに、お開きにするタイミングがむずかしい
……などを挙げている。どれも真っ当な指摘である。とどのつまりが、「飲み会」というのはバンドのライブみたいなものだと私は考える。各メンバーの奏でる音やテンションが同じ空間でお互いを刺激しながら引き寄せあい、バンド全体が感極まっていく──そんな一種のグルーヴ感が「飲み会」の醍醐味であって、ならば「オンライン飲み」は各メンバーが別々場所で担当パートの楽器を演奏したり歌ったりした音をパソコン内にまとめたような、いわゆるライン録りのレコーディングみたいなものである。
ビジネス(=オンライン会議)だったら「ライン録り」もありだろう。むしろ、こっちのほうが合理的に、すみやかかつ高いクオリティで事が運ぶケースだってなくはない。ちなみに、プライベートでも「オンライン合コン」や「オンライン婚活」は、ハード面の充実や段取りの進化などを背景とし、今でも一部の界隈では、なかなかに盛り上がっているとも聞く。おそらく、「出会い」という明確なゴールが設定されているがゆえ、「オンライン」を(ビジネスシーンと同様)単なるツールと完璧に割り切ることができるからだろう。
だがしかし!「酒を飲む」というゴールの見えない曖昧な行為そのものを目的とする、そして「アルコール」だけではなく「場の空気」に酔うことで独特のグルーヴが生まれる飲み会は、やはり「ライブ」でしか成立しないのではなかろうか?