日本選手団の金メダルラッシュに沸いた東京五輪2020であったが、そのいっぽうで、インターネット上において特定の選手への心ない誹謗中傷が多く書き込まれ、そのエスカレートの度合いが社会問題となっている。
そんななか、ニュース配信サイト大手の『Yahoo ! ニュース』のコメント欄、通称「ヤフコメ」にも、たとえば東京五輪に出場した某有名日本人アスリートに対する、あまりに口汚い批判が数百件も寄せられたという。
『Yahoo ! ニュース』の月間ページビューは、昨年4月には225億PVを記録。当然ながら、ニュースメディアとしての影響力も半端ではない。にもかかわらず、なぜこうした毒性の強すぎる“異端な投稿”を取り除くことができないのか? いっそ、ヤフコメ欄ごと無くしてしまえばいいのに……? しかし、そう簡単にはなかなか解決できない、複雑な事情がいろいろとあるらしい。そこらへんのことをネット版の『週刊朝日』の取材に応じたヤフー関係者はこう語る。
「Yahoo ! ニュースのPVのうち、1〜2割はヤフコメが稼いでいる。コメント欄を問題視している人は社内にもたくさんいるが、PVが減るから閉鎖できないんです」
そして、やはり『週刊朝日』の取材に応じた『Yahoo ! ニュース』側は、以下のような回答をしている。
「コメント欄は、公開しているコメントポリシーに違反したものは排除し、投稿停止措置を取るなど、誹謗中傷対策を強化しています。また、現在は有識者会議を招いて議論し、削除件数や基準についての透明化を目指しています」(ヤフー広報担当)
ただし、高田昌幸・東京都市大教授(ジャーナリズム論)は、これら一連のやりとりを踏まえ、次のような警鐘を鳴らしてもいる。
「ネット上の匿名投稿は必要。実名でしか意見を言えない社会は諸刃の剣。権力批判も難しくなる」
「コメント削除等の権限をヤフーに与えすぎるのも危険。世論を一定の方向に導きかねない。匿名コメントを維持するなら、削除や非表示の明確な基準を示し、個別具体的にも理由を明らかにすべきです」
う〜ん……つまり「削除や非表示の明確な基準を示し、個別具体的にも理由を明らかにすること」ができないなら、「匿名の誹謗中傷」も“必要悪”として放置しておくしかない……ってことか? たしかに、高田教授のおっしゃっていることも、じつに筋が通っている。正直、私もヤフコメ欄にはけっこう目を通しているし、ときに原稿のネタにさえもしていたりする。「ソレごと無くなってしまう」のはちょっぴり困るかもしれない。
なので、もう何度か私は主張しているのだが、いくら「ネットの書き込みはスピード重視」とはいえ、一応は世界へと公的なセルフアピールをするのだから、やはり“入稿”する前に誤字・脱字をチェックするくらいの作業を書き手側は怠らないでほしい。その「誤り」によって“伝えたいこと”が致命的に捻じ曲がってしまうケースだってあるわけだし、「誤り」だらけの文章は単純に読みづらくてたまらない。
文中に登場する人物の名前を書き間違えるなんてえのは、もってのほかだ。とくに、その人物をこき下ろす場合、せめて凡ミスだけは徹底的に避けるよう極力の注意を払うべきだと思う。
いっそ、「明確な誤字脱字があるコメントは全部削除する」といった決まりを定めてみればいかがだろう? そうすれば、同じ誹謗中傷でも少しは用心深い文章が書けるようになるのではなかろうか?