ジャーナリストの岸田雪子氏が子育て周辺の課題を取り上げる連載「岸田雪子のBloom Room」。笑顔の“つぼみ”を花開かせる小部屋です。今回は日常の中の子どもへの「声かけ」を考えます。
こんな投稿が話題になっていました。
人気テレビ番組の「お姉さんたち」の言葉に注目した投稿者さんに対しては、「いいお手本ですね」「何気なく聞き逃してしまいそうですが、確かに素晴らしい表現力ですね!」などと賛同の声がたくさん寄せられていました。
とても素敵な表現だと私も思います。それは、「お姉さんたち」の言葉には、2つの意味がこめられているからです。
1つは、「承認」です。「おにぎりの絵を描いた」「カンガルーだ」というのは、子どもの行動をそのまま言葉にしているだけ、なのですが、ここがポイントです。ただ言葉にするだけですから、そこに「評価」は含まれません。「子どもが自分でやったこと」を「そのまま認めている」ので、子どもの自信や意欲を育てることにつながるのです。
もう1つのポイントは「共感」です。「酸っぱそう」「お腹がすいた」「暖かそう」というのは、子どもが描いた世界をリアルに「感じている」言葉で、描いた喜びや楽しさを分かち合うことができます。子どもの自信だけでなく、子ども自身が他者に共感する心を育てることにつながる言葉なのです。
「自己肯定感が大事」と言われる昨今ですが、子どもを「ほめる言葉」って案外、難しいものですね。実は「上手だね」「頭がいいね」などの声かけは、逆効果になることもあります。
例えば子どもがテストで100点を取った時、「すごいね!頭いいよ」と声をかければ、子どもは誇らしそうにするかもしれません。ところが、いつもいい点数を取れるとは限りませんから、不満足な時には、結果を隠したり、ウソをついたりするようになるかもしれません。
また「100点=頭がいい」と学習した子どもは「100点をとれない=頭がよくない」と感じて、自信を失ったり、挑戦する意欲が低下してしまうこともあるのです。自分の出した結果を、直接、自分自身と結び付けてしまうからなのですね。
ですから、子どもが良い行いをしたな、と思った時には、「承認」と「共感」を思い出してみてください。「共感」は少しハードルが高いと感じた時は、「子どもが自分でやったことをそのまま言葉にする」だけでも、大丈夫です。
日常の「ほめ方と叱り方」などの声かけや、子どものチカラを伸ばす「聴き方」について私が執筆した新刊が発売されました。たとえば、子どもがお友だちにオモチャを貸した時、「優しいね」という声かけは良い? あるいは子どもがゲームを止めない時は、どう叱ったらいいの?など、ケーススタディも記しました。スウェーデンの子育て事情や、世界で注目される親支援プログラムも紹介しています。参考にしていただけたら嬉しいです。
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