この5年ほど、今のフリーランスという立場を捨てて再就職する夢をやたらよく見る。転職先はミツイブッサンだとかハクホウドウだとかオールアバウトだとか……といった、そういういわゆる名の知れた大企業だ。あと、地方自治体のナントカ特別室とか? いずれにせよ、しっかりとした運営母体を持つ、毎月必ず定額の給料が振り込まれ、それなりの額のボーナスや退職金も十分に期待できる働き口ばかりである。
この類(たぐい)の夢が心理学的見地から自分の潜在願望をどれくらいストレートに具現化しているのかはよくわからない。だが、大学を卒業して6年間だけ正社員として画材屋に勤め、それ以降は基本「フリーの文筆業兼イラストレーター」として、これまで30年間なんとか食いつないできた、今年還暦を迎え、人生の約10分の1しかサラリーマンの経験がない私は、もしかするとフリーランスという“生き方”に多少疲れを感じているのはたしかなのかもしれない。
『日刊SPA!』が『50代の転職活動に待ち受けていた苦難「中年のこだわりは求められてはいない」』なるタイトルの、中高年男性の厳しい再就職事情におけるエピソードを紹介する記事を配信していた。
同記事中に登場する、50代で精密機械メーカーを早期退職し、転職先から内定をもらうのにとても苦労したという鈴木さん(仮名)は、その実感をこう語っている。
「再就職の道を選んだ当初は、自分の経験や実績をアピールすることに徹していたのですが、うまくいきませんでした。そのような“こだわり”は、あまり企業は求めていないような気がします」
面接中、たまたま返答した「誠実なクレームへの対処法」にスポットがあたり、鈴木さんは見事とある企業の内定を決めたが、当初、鈴木さんは「自身のクレーム処理能力」に関してはさほど高い自己評価をしていなかったらしく、
「前職の何が活きるのかはまったく予想できない」
……という。なるほど。じつに実利的な素晴らしいアドバイス……だと私は思った。では、これらの金言を受け、ワタクシ山田ゴメスの希望転職先へと提出するための自己アピール文を作成してみよう。
【30年間、フリーランスの文筆業、それにイラストレーターとして活動してまいりました。
卓越した文章力という面では多少御社のお役に立てると自負できますが、もちろんのこと、その過程から得たスキルや経験値などは微々たるものでしかありません。
しかしながら、文筆業とは仕事柄、たとえば最初に与えられた1時間足らずで、初対面の人たちや初見の物事へと深く入り込まなければならない職業であります。
したがって、どのような未知に対してもそれなりの体裁で対処できるだけの順応力のようなものには絶対の自信があります。
そして、それはどのような職種や(報酬も含む)待遇にも、一から実直かつ謙虚に向き合うことができるということでもあるのです。】
以上、いかがだろう? もし、このアピール文を読んで私に興味を示してくださった企業人事部の方がいらっしゃるなら、とりあえずは何らかの手段をお使いになって、ご一報のほどよろしくお願いいたしますm(__)m せっかく再就職できてもすぐ定年になっちゃいますが……(笑)。