「カツカレー」をめぐる、結論なき不毛な論争こそが、インターネットでのもっとも正しい炎上の仕方なのではなかろうか?

 

「カツカレー」について、予備校講師でタレントの林修先生(56)が展開した持論が、ちょっとした物議を醸している……らしい。そういうようなことを『マネーポストWEB』が報じていた。おおよそでは、

 

昨年11月28日に放送された『日曜日の初耳学』(TBS系)で、飲食店プロデューサーの稲田俊輔氏にインタビューした林先生──稲田氏が「カツカレーは1+1=1.5くらいにしかならない」と評すると、林先生もその意見に賛同。「カツが美味しいお店だからといって美味しいカレーがつくれるわけではないし、カレーが美味しいお店がカツを美味しく揚げる技術をもっているわけではない」とし、「カレーとカツは別々に食べたい」と結論づけた。

 

……みたいな内容である。そして、この林先生の発言を受け、ネット上では、

 

「カツカレーは日本人の最も偉大な発明の一つ」

 

「ルウが染み込んでフニャついた衣のトンカツをガブッと行くのが好き!」

 

「カツカレーは1以下のカレーと1以下のカツを合わせることによって1.5にする神料理だぞ!」

 

……ほかの反論が“カツカレー原理主義者”から年(とし)をまたいで多く寄せられているという。

 

 

当然ながら(?)、私も「カツカレー」は大の好物で、個人的には“トッピング”する「カツ」はチキンカツが一番好きだが、まあ、カツならトンカツでもビフカツでもなんでもかまわない(※ただし白身魚だとか牡蠣だとかの魚介系は×)。たとえば、とあるカレー屋さんでカツカレーを注文したとして、その品の上には六切れに分割された、まだカレールーに(ほぼ)侵食されていない“真っさら”なトンなりチキンなりビーフなりのカツが乗っていたとしよう。

 

そんなとき、私はまずカツ全体に薄くウスターソースをかけ、最初の一切れ(※だいたいは右端か左端の半円形になっている部分だ)を純粋に「カツ」として楽しむ。次に、もう一方の半円形になっている部分一切れとその隣にある二切れの計三切れにカレールーを“ソース”としてかけ、そこにライスを添えながら口の中でこれら3つの味と食感を合体させるような、どちらかと言えば個別的な格好で「カツカレー」をじっくりと吟味する。

 

そして、最後の二切れは皿の上でカツとカレールーとライスを、スプーンを使ってパリッとしたカツの衣が完全にしなしなになるまでぐちゃぐちゃに混ぜ、村上春樹センセイの小説とかに出てきそうな、まるで井戸あたりに閉じこもって現実と非現実の境界線を失い彷徨(さまよ)う主人公のごとくに形而上的な恍惚感へと入り込んでいくのだ。

 

もちろんのこと、これこそが「正しいカツカレーの食し方」だと声を大にして主張する気なんぞ、さらさらない。林先生がおっしゃるとおり、「カレーとカツは(個々を純粋な料理として)別々に食べたい」という心情も十分に理解はできる。

 

前出した『マネーポストWEB』の記事下にあるヤフコメ欄には、

 

「結論がしっかり出せる事じゃないのに、なぜここまで熱くなっちゃうのか? そこが不思議です」

 

……なんて風な主旨のコメントが複数見られたが、このような「結論がしっかり出せない不毛な議論」を真剣に延々と──ある意味“長閑(のどか)”に、牧歌的なかたちで戦わせることこそが、インターネットにおける正しい“炎上”の仕方だと私は考えるのだが、いかがだろう?