むかしむかし、あるところに小さな王国がありました。
その王国は「TK」というなまえの気がつよい女王さまが、
むちゃなほうりつを次々とつくって国民にしいる、
どくさい国家でありました。
たとえば、その王国にすむ、おとなの男のひとは、
背の高さが170㎝いじょうじゃないと「じんけん」があたえられません。
だから、背の低いおとなの男のひとは、
まるで牛や馬のようにこきつかわれてしまうのです。
そんなある日、
もっともっと王国をゆたかにしたいと思った女王さまは、
となりにある「りべらる」というなまえの大きな国に戦争をしかけましたが、
「こんぷら」というなまえの最新へいきであっさりと返りうちにあって、
女王さまは島ながしのけいになってしまいました。
人気プロゲーマーであるそうな『たぬかな』というヒトが、2月15日にライブ配信プラットホーム『mildom』での配信中に「身長170㎝ない男は人権ない」などと発言したことが物議をかもしている。
その問題発言は、たぬかなというヒトが、かつて「自宅でUber Eatsを利用した際、大学生くらいの年齢の男性配達員からいきなり連絡先を聞かれた」とのエピソードに起因しているらしく、同ライブ配信では当時の率直な心象を以下のように語っていた……と聞く。
「(注文した商品を)受け取ったらさ、なんかなかなか帰らんと家の前でずっとモゴモゴすよって。で、もう一回ピンポン鳴って、出たら『すみません、連絡先教えてもらえませんか』とかって。恐怖でしかない」
たしかにコイツは恐怖でしかない。昨今、こうしたUber Eatsの配達員への丸投げ的な雇用形態──「教育なき人海戦術」が、方々でトラブルを生んでいるのはまぎれもない事実であって、実際に被害を受けた張本人が、それを実名を挙げて糾弾するのは決して間違っちゃいない……と、私は考える。
しかし、そのあとの発言がいけなかった。
「背が低くて、たぶん165(センチメートル)くらいしかなかった。165もないんちゃうかな、くらいの。その時点でもう『無いな』ってなってしまった。背が高くてムキムキやったら連絡先は教えてた可能性はある」
「なんや! 高身長のマッチョやったら教えてたんかい!?」
この時点でまったく論点はすり替わり、
「165はちっちゃいね。ダメですね。170ないと、正直人権ないんで。170センチない方は『オレって人権ないんだ』って思いながら、生きていってください。骨延長の手術を検討してください。『骨延長手術』で調べてください。170あったら人権がちゃんと生まれてくるんで」
……と、単なる「身長アンダー170㎝男」のディスりへと成り下がった過激な“演説”が止まらない……。
さすがに「人権」までは剥奪しないだろうけど(笑)、内心では同じような基準で“タイプの男性”を線引きしている女性は、今でも一定数実在するのではなかろうか。ただ、そういうヒトたちは「自分」という名の「小さな王国」だけでその「法律」を施行してりゃいいわけで、「他国」を無理やり「併合」しようとするから、「コンプライアンス」という名の「最新兵器」で「返り討ち」の目に合ってしまう……。
おそらく、たぬかなというヒトは、自身の「王国」の勢いに乗じたうえで「等身大の自分」を貫こうとして、つい迂闊な言動に走ってしまったんだろう。かといって、やれ「ジャニーズの人気者にも身長160㎝台がたくさんいる」だの、やれ「北京オリンピックで金メダルを獲得した日本の大ヒーロー・平野歩夢選手も身長は165㎝」だの……と、反証法を駆使してまでたぬかな発言を全否定する「リベラル国」のやりくちも、いささか大人気がない気がしなくもない。
ちなみに、ここ数年は身長169.7㎝から171㎝あたりを行き来して、「人権」を奪われたり再び与えられたり……と年に一度の健康診断ごとに翻弄されている還暦間際のこの私であるが、そんな私は「身長があんまし高すぎる男の人って、どうも苦手なんですよ〜」みたいな、じっくりと探せば確実に発見できる……はずな、また別の「王国」へと「亡命」すればいい……と開き直ることにしている。そう! 「こんな国もあるよね」と軽く流して、頑なにシカトしておけば済む話なのだ。
ところで、私は今回の「身長170㎝ない男は人権ない発言」問題をネット上でながめていたしばらくのあいだ、「たぬかな」を「たかみな」だと、てっきり勘違いしていた。某大物政治家に「政治家向きな性格」だと太鼓判まで押された、あの高橋みなみが!?──なんてえことは……やっぱ、あり得ませんでしたね〜(^^;;