「子どものマスク」どうしていますか? 「体育の授業では外して」と呼びかけられても、“外せない” のは…

 

ジャーナリストの岸田雪子氏が子育て周辺の課題を考える連載「岸田雪子のBloom Room」。笑顔の “つぼみ” を花開かせる小部屋です。今回は「子どものマスク着用」について。

 

子どもたちが通う小学校などで、熱中症の発生が相次いでいます。毎年、小中高校での熱中症の発生は、5000件ほどです。死亡に至る事例はかつてより減っていますが、体育やスポーツ活動の熱中症は、気温が25度などさほど高くなくても、湿度が高い場合に発生することがあります。梅雨の間も注意が必要です。

 

一方で、子どもたちがマスクを外す場面については、学校現場では模索が続いています。東京都内のある小学校の校長先生は、「体育の時間は、特に競技中はマスクを外しましょう、と指導しています」としながらも、「ですが、実際は外さない子どもも多いのです」と言います。また、別の中学校の先生は「6月中旬に運動会を行いましたが、100メートル走などの接触が少ない競技でも、マスクを外さない子どもたちが一定程度いたのが実情です」と話していました。

 

小中高校の子どもたちのマスク着用について、国は次の場面では「必要なし」と明示しています。

◎体育の授業・運動部活動・登下校

◎プールや屋内の体育館で行う体育の授業や運動部活動

◎離れて行う運動や移動、密にならない外遊び、屋外の自然観察などの活動

◎屋内でも距離が確保でき、会話がほとんどない読書・調べ学習など

 

つまり、体育の授業では、屋外でも屋内でも「マスクは必要なし」で、むしろ夏場は「熱中症対策を優先し、マスクを外すように指導を」と呼びかけられています。それでも「外さない子ども」がいるのは、なぜなのでしょうか。

 

ひとつには、「必要のない場面」を示すという手法のわかりにくさがあるように思います。学校という空間で、子どもたちが自由に、自分で判断を下すのは難しいこともあります。むしろ「屋外では、原則としてマスクは外すこと」として、「屋外でも着用すべき場面」を限定的に示した方が、シンプルで子どもたちが行動に移しやすいのではないかと思います。

 

また、学校現場の先生方から複数聞かれたのが、「濃厚接触者になると困るから、マスクを外せないということもある」という声です。保健所が濃厚接触者を特定するとき、マスクをしていれば該当しない場合も少なくないため、距離の取りにくい学校現場では、「その時」に備えてマスクをなかなか外せない、という事情が根強くあります。

 

大人の世界では、経団連が先週ガイドラインを見直し、マスクの着用について「従業員に勤務中の着用を促す」としていた記述を削除。人の距離を十分確保できる場合など、状況に応じて着用の判断ができるよう、改訂しました。

 

3回目のワクチン接種が6割を超え、重症化病床にも余裕がある今だからこその改訂でしょう。国の濃厚接触者のルールについても見直しが必要ではないでしょうか。

 

中には「マスクを外した顔をなるべく見られたくない」という子もいます。多感な学童期から思春期にかけての、子どもたちの発達への負荷も見逃せないものです。少なくとも子どもたちが自分で納得して行動に移せるように。熱中症のリスクと、マスクを外すことのリスク。マスクが自分を守る効果と、他の人を守る効果。それらを大人が丁寧に伝え、「外した方がいい」場面について、話し合っていければと思います。

 

 

岸田雪子さんは、子育てと介護のダブルケアの日常を綴ったブログも更新しています。

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