角川春樹事務所が出版する月刊女性向けファッション誌『美人百科』が運営するWEBサイト『美人百科.com』が配信する恋愛系の記事を、最近Yahoo !ニュースでよく見かける。今日も『彼の夜の行為がイヤ…「やめて」って言ったら嫌われる』といったタイトルの記事が目についた。大雑把に説明すると、
彼氏がどんどん支配的なHをするようになって、ちょっと困っています(泣)。彼が好きなセクシー動画に出てくるHを真似しようとするんです。付き合ってすぐの頃は優しかったのに……(以下略)
……みたいな女性読者のお悩みに対し、識者として登場するメンタル心理カウンセラーさんがアレコレと解決法をレクチャーする……ような内容である。そして、その「アレコレ」とは、かいつまんで説明すると、
男は意外と鈍いから、相談者が本気で嫌がっていることが伝わっていないのかも?(=「彼女も楽しんでくれている」と勘違いしているケースもある)
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基本、相手に「イヤ」とはっきり伝えるべき案件だが、その伝え方は配慮しましょう。
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頭ごなしに「イヤ」と伝えてしまったら、彼が傷ついたり怒ったりするリスクもなくはないので、「イヤ」ではなく「こうしてほしい」と、ポジティブな “提案” に変えればうまくいく…かも?
……みたいな感じであり、回答の上には「脈あり度:☆☆☆(※満点は☆5つ)」という謎のミシュラン表が添えられている。(カウンセラーさんのアドバイスどおりに振る舞えば)関係修復できる確率が60%ってことなのか???
たとえば「◯◯◯」といった過激なプレイを強要してくる男に、それよりも比較的 “マシ” な「×××」といったソフトプレイを「こうしてほしい」と提案したところで、その彼は「強要すること」自体に欲情しているのだから、そう簡単には受け入れてもらえない気もするが、
「オレの “教育” のおかげで、彼女がHに対して積極的な姿勢を持てるようになった」
……とでも、また「勘違い」してくれたら、多少は “悪くない方向” への軌道修正できる可能性だって、なくはない……のかもしれない。私個人の率直な意見を申せば、セクシー動画のあくまで観賞用のパフォーマンスを安易に “再現” することで満足感をおぼえるような、しかもそのプレイをなんとなく拒絶している女性を「イヤよイヤよも好きのうち」と自己完結的に決めつけてしまうような、感受性の乏しい男なんてとっとと別れちゃえばいいのに……と思う。が、相談者からすれば、そんな男でも別のなにか捨てがたい長所や事情があるのだろう。
さて。今回、前出の記事で私がもっとも注目したいのは、じつのところカウンセラーさんの回答ではなく、「支配的なH」という耳慣れない言葉だったりする。どんなHやねん(笑)!
大手のニュース系プラットフォームの(機械的な)検閲が激しさを増す昨今、配信側によるエロまわりの際どい言葉のチョイスは、よりいっそうデリケイトな作業となりつつある。
こうした実状下において、このような奇異で面白い表現がスピンオフ的に生まれてくるという事実は、我々文筆業者にとっては、残された一筋の光明なのではなかろーか?
ただ、「支配的なH」だとか「彼の夜の行為」だとか「セクシー動画」だとか……と、表現をまわりくどくすればするほど、文章全体がますます官能小説的ないやらしさを帯びていく気がもするのだが……(笑)?