私は、これまで『ゆたぼん』なる「少年革命家」を名乗り、現在はクラウドファンディングで資金を集めて日本一周企画にチャレンジ中である13歳の「不登校ユーチューバー」に関して、一切このcitrusをはじめとする公的な場では語ることなく、 “見(けん)” の姿勢を貫いてきた。
先日、寄稿したばかりのジャイアンツの坂本選手同様、下手にイジるとわりかし燃えやすそうな “物件” だし、ゆたぼん氏(と、そのお父さん?)が自身のYouTubeやSNS、他の各メディアで放言する主義主張が、私には今ひとつしっくりと来ない──ただ、声を荒げて反論したくなるほどの嫌悪感も湧いてはこない……。あと、私には子どもがいないので、彼(ら?)が社会に一石を投じてはいる「教育問題」について、軽々しくアレコレと論じるのもいささか説得力に欠けるのでは……なんて躊躇も正直あった。とどのつまりが、
「キミはキミで頑張れ! オレはオレで頑張る!」
……といったスタンス、距離感をずっとキープしてきたわけである。
しかし! 昨今ネット上を賑わせている「ゆたぼん九九ができない説」にかぎっては、ちょっと看過できない引っかかりのようなものがあったので、今日はあえて一言言わせていただく。
念のため、事の経緯(いきさつ)を簡単に説明しておくと、
音楽グループ『Repezen Foxx(旧レペゼン地球)』のYouTube生配信にゆたぼん氏が出演中、「ハーバード大学に行きたい」と将来の希望を述べるも、九九の掛け算が言えない一幕があり、その基礎中の基礎学力の無さがネット上で賛否を呼んでいる。
……みたいなあらましであり、その「否」の意見を受け、ゆたぼん氏は自身のツイッターに
「九九ができひんとか本気にしてる奴マジで笑えるねんけど、エンタメもわからんとか終わってるやん」
……と投稿。あくまで「演出だった」と弁明する。
はたして、彼が「本当に九九ができない」のか、それとも「ウケを狙って九九ができないフリをしていただけ」なのか……その真偽は私にはわからない。けれど、どっちせよ……仮に後者の「フリ」だったとしても、その「エンタメの一環としてのサービス精神」は、「少年革命家」として一番やってはならない「演出」だったのではなかろうか。
「九九ができない」っていうのは、「不登校」という革命的行為を良しとしない敵対派にとっては「ほら見たことか!」と勢いづける格好のツッコミどころであり、いっぽうの擁護派にとっては「やっぱ不登校ってダメなのか…」的な迷いが生じかねない、致命的ですらある不安要素となりうるからだ。
「不登校」を推進する者にとって「九九ができない」という “事実” は、たとえ冗談にせよ絶対に見せてはいけないメガトン級の “弱み” である。微分積分ができなくても日常生活に支障をきたすことは、ほとんどない。私もけっこう怪しかったりするけど(笑)、それで困ったことは記憶のかぎり一度もない。が、九九ができないと……下手すりゃ毎日単位で支障をきたすケースにブチ当たってしまうんじゃないか? 飲み会でワリカンするときも、草野球でスコアをつけているときも……。
YouTubeでそれなりの知名度と収益を上げてきた一人の “プロフェッショナル” として、迂闊な「エンタメ的な演出」が有象無象のマスコミによって、こういう切り取り方をされてしまう危険性もあることは百も承知のはず……。ゆたぼん氏の一連の活動に
「不登校でも平気なんだ、ちゃんと生きていけるんだ…」
……と、勇気づけられてきた子どもたちのためにも、この「九九ができません疑惑」だけは全身全霊をかけて払拭してもらいたい。