「日本の手間暇かけた食文化」から考える、「めんつゆ」の有用性
『J-CASTニュース』によると、料理研究家で人気YouTuberのリュウジさんが1月23日、自身のツイッターに一部ユーザーから寄せられた
「めんつゆ等を使った時短料理が流行ると日本の手間暇かけた食の文化が壊れますのでやめてください」
……との問いかけに対し、
「そんなんぶっ壊せばいいんですよ」
……と回答し、ネット上で共感を集めている……のだそう。
リュウジさんは続けて、こうツィートする。
「手間暇かけるってのは手段であり目的ではありません。伝統的な調理法も元はその時代にあるもので『美味しさ』を求めた結果です」
「ならば私達も時代に合った調理法や調理器具で『美味しさ』を探しましょ 大丈夫、100年後には今の流行りの伝統的な食文化になってますよ」
「僕は手間暇かけた料理も好きだけどゲームもやりたいし時短料理ゴリゴリやります 料理ってのは手間暇かけたから、楽したから必ずしもウマかったり不味かったりするもんじゃない 10時間かけたカレーより市販のルーで作ったカレーがウマいなんてザラだしその逆もまたしかり。ウマいかどうかは別の話す」
私は50歳を過ぎたころから、わりと料理に「手間暇」をかけることを厭わないタイプのヒトになったので、「時短」という観点にはあまり着目していないのだが、私にとっては最強の調味料である「めんつゆ」がキッチンから無くなってしまったら、けっこう……どころか相当につらい。万一切らしたりしたら、わざわざ “それ” だけを、自宅から徒歩で10分はかかるスーパーまで買いに行く。
「(自宅)料理用」のレシピとして私がもっとも愛用しているのは、ゲイカップルの食卓にスポットを当てた漫画『きのう何食べた?』(講談社/モーニング)なんだが……なぜかと言えば、彼らがつくる料理の大半には躊躇なく「めんつゆ」が使用されているからにほかならない。もちろん、リュウジさんのYouTubeもたまにチェックしている。
逆に『美味しんぼ』とかに載っているレシピは、あまり参考にならない。一度、描かれているとおりの食材と調味料と手順をなぞり、10時間くらいかけて「牛頬肉だかスネ肉だかの赤ワイン煮」をつくってみたことがあるのだけれど……どこでなにを間違ったのか、ただ酸っぱいだけで塩味ゼロのゴメス的には残念な料理が出来上がってしまった。食通はこの酸っぱいだけな感じが「旨し!」なのかもしれない。でも、少なくとも私の舌にはまったく合わなかった……が、それなりの食材費もかかっていたので、このまま捨てるのも勿体ない……ってことで、やぶれかぶれに「めんつゆ」を少々垂らしてみると……(少なくともゴメス的には)どうにか食べられるくらいに “味変” したのであった。
去年に結婚した私のとある男性友人は、新妻が彼の自宅に引っ越してきた初日──キッチンにあった「めんつゆ」やら「出汁の素」やら「鶏がらスープの素」やら……を全部捨てられてしまったと聞く。彼女はナチュラル志向が強いタイプの女性であるようで、味噌汁一杯をつくるときでも、きちんと鰹節なり煮干しなりで出汁を取るらしい。
そういうヒトのことを否定する気はさらさらない。ただ、私としては「めんつゆ」という名の “魔法の液体” をポイされると……約10年をかけてコツコツと “上書き” し続けてきた「ゴメスレシピ」のじつに90%以上が消失してしまう……とだけは言っておきたい。