「子どもの声は騒音ではない」に賛同する理由。長野市の「騒音クレームで公園廃止」騒動で欠けていたこととは。

コラム

 

東海大学客員教授でジャーナリストの岸田雪子氏の連載「Bloom Room」。笑顔の“つぼみ”を花開かせる小部屋です。最終回となる今回は「子どもの声と遊び場」について考えます。

 

“子どもの声がうるさい” など一部住民からの苦情をきっかけに、長野市の公園が廃止された問題が、また話題となっています。先日、市が保護者向けの説明会を開き、「新しい遊び場を、近くの小学校の施設に作る」と説明したことで、ネット上では「結局、学校の先生に任せるのか」などと厳しい声も上がりました。

 

よくよく市の説明を聞くと「運営は外部に委託する」とのことですので、先生方の負担が増える心配は、ひとまず少ないと見て良さそうです。

 

とはいえ、これまで住民の意見を聞く場を設けながらも、なぜ一部の近隣住民の苦情が優先されたのか……まだ腑に落ちないという方も多いこの騒動。どこに問題の根っこがあるのか、改めて取材してみました。

 

ポイントの第一は、市が初めて住民に説明会を開くよりも2年ほど前に、すでに「公園廃止」は決定していた、ということです。主な理由は、苦情を受けた児童センターが子どもたちの利用を中止したため、「使わないなら管理もできないので、廃止」に至ったとのことです。

 

報道により広く知られ、「存続」を求める声が高まったのは、決定の後のこと。しかも、この公園は一般的な公園とは異なる、地権者から借りた「借地利用の遊園地」であるため、廃止の決定を受けた地権者が、すでに次の土地の利用を計画しており、「廃止決定から後戻りできなかった」というのが実態のようです。

 

最初の「廃止決定」のプロセスに、公園を利用する側の住民の声を広く聞く機会がなかったことは、遊び場の大切さがどこまで考慮されていたのか、コミュニケーションの不足にも疑問を残しました。さらに気になるのは、意思決定の過程に「こどもたち」自身の存在がないことです。

 

あまり知られていないかもしれませんが、去年6月に成立し、今年4月から施行された「こども基本法」という法律には、「こどもの政策を決める時には、こどもの意見を聴くこと」が国と地方自治体に義務付けられています。何が「こども政策」か、は自治体などの判断に委ねられますが、今回のような「遊び場の利用」は、今後、十分にその対象にあたるでしょう。私がお話を聞いた長野市の担当者はこの法律条項はご存じありませんでしたが、現場の担い手の方々にどう伝えていくのかは、国の課題でもあります。

 

国会では先日、「子どもの声は騒音ではないという法律の必要性」が話題となりましたが、私はこれに賛成です。

 

東京都がすでに条例で定めているように、子どもの声を「騒音」のうちの「数値だけで規制する対象」から外すことで、健やかに育つ子どもの声も、保護の対象であることを、社会が再認識することができるからです。

 

「騒音」と感じるかどうかは人それぞれであるからこそ、数値だけではなく、声を聞く側の思いも、子どもの育ちもどちらも大切であることを出発点として、折り合いをつけられる地点を探す。


子どもを育てる側、声を聴く側、双方の大人が、気遣いと寛容さを持って、合意づくりを図る丁寧なコミュニケーションをとることが肝心だと思うのです。
それが、「子どもは子どもらしくあっていい」という社会のメッセージにもなるはずです。

 

 

さて、2019年から、子どもや子育てをめぐる課題について執筆させて頂きましたcitrusさんでの連載は今回が最終回となりました。最後までお付き合いくださいました読者の皆さまに心から感謝しております。いつかまたどこかで、お目にかかれますように。ありがとうございました。
 


 

岸田雪子さんは、子育てと介護のダブルケアの日常を綴ったブログも更新しています。
よろしければ、是非ご覧になってみてください。
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