日本一給料が高いモンスター企業「キーエンス」って何をやっている会社? 圧倒的な利益率のワケは?

ビジネス

安部徹也

 

 

「キーエンス」という会社をご存知でしょうか? 恐らく、多くの方は何をやっている会社か知らず、もしかすると名前すら聞いたことのない方もいらっしゃるかもしれません。

 

実はこのキーエンス、“日本一給料が高い会社”としてメディアが毎年公表する『年収ランキング』や『生涯賃金ランキング』の常連であり、それゆえ企業としての稼ぐ力も日本でトップクラスの、知る人ぞ知る企業なのです。

 

類稀なる利益率の高さ、そして給与の高さはどこから来るのか……? 今回は、多くが謎のベールに包まれたキーエンスの秘密を解き明かしていくことにしましょう。

 

 

■年収2000万円超え、営業利益55%超! パナソニック、ソニーを軽く凌駕

 

どのくらいすごいのか? 業界こそ違え、みなさんもご存知のメーカー「パナソニック」「ソニー」の営業利益率・平均年収と比較してみましょう。

 

本業での稼ぐ力を示す営業利益率は2017年度で55.6%と、パナソニックの4.8%、ソニーの10.2%をまったく寄せ付けない状況。また、2017年度の平均年収は2088万円(平均年齢35.9歳)であり、パナソニックの768万円(平均年齢45.6歳)はもとより、ソニーの1014万円(平均年齢42.3歳)さえも大きく上回る結果になっています。

 

キーエンスという名前と規格外の給料から、外資系企業と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、れっきとした日本企業です。1974年に創業者で現名誉会長の滝崎武光氏が兵庫県尼崎市に『リード電機』を設立したところから歴史はスタートします。その後、1986年には社名を『キーエンス』に変更。社名は、鍵(キー)と科学(サイエンス)に由来します。

 

事業は、各種センサーや測定器を始めとして、画像処理機器、制御・計測機器、研究開発用解析機器やビジネス情報機器など多岐にわたり、企業向けの機械装置を自社で開発・販売。1990年には東証1部に株式を上場し、2018年3月期には売上高5,268億円、従業員数6,602名の大企業にまで成長しています。

 

 

■キーエンスとその社員がダントツに稼ぐ秘密

 

なぜ、社歴45年弱の企業が日本でも有数の稼ぐ力を手にし、日本一給料の高い会社にまで登り詰めることができたのでしょうか。

 

その理由はキーエンス独自のビジネスモデルにあります。他社の真似できないレベルで自社製品の差別化を行い、極限までコストを削減することによって、圧倒的な利益率、そして結果として社員への高い水準での利益分配を実現することが可能になっているのです。

 

ビジネスモデルのポイントは、以下の4つに表すことができるでしょう。

 

(1)徹底的に顧客のニーズに応える

 

キーエンスでは、すべての取引先に担当者が割り当てられています。一般的にメーカーは事業の規模を大きくするために、販売代理店と契約して営業を外注することが多いと思いますが、キーエンスは販売代理店を利用することなく、自社の営業担当者が取引先を訪問し、注文を取って来るのです。

 

敢えて販売代理店を利用しないのはコスト面のメリットもありますが、直に顧客の声を聞き、製品開発に活かすためでもあります。担当者が普段の営業活動を通して常に取引先の些細な悩みや不便さを聞き逃さず、製品開発にフィードバックすることにより、「こんな製品を待っていた」と顧客ごとにカスタマイズされたオリジナル製品が次々と誕生しているのです。

 

その結果、キーエンスでは新製品のおよそ7割が“世界初”や“業界初”といったライバル他社の手掛けていない製品であり、それゆえ値引きなど価格競争に陥ることなく言い値で販売できるのが高い利益率の源泉となっているのです。

 

(2)あえて工場は持たない

 

キーエンスは電子機器のメーカーですが、実際には工場を持ちません。自社で企画・開発した製品を外注生産し、それを販売するというビジネスモデルを採用しています。これは工場を自社で保有すると人件費を含めた固定費を負担しなければならないうえに、常に最先端の技術を追求するための莫大な研究開発費も必要となってくるために、コストやリスクの面からアウトソースした方がメリットが大きいと判断したためでしょう。

 

アップルも同じようにiPhoneのデザインから企画・開発までは自社で行い、生産はその時に応じた条件の良い工場に生産を委託しています。技術革新のスピードが極端に速まった現代では、自社で工場を保有するよりも、専門の業者に外注する方が最終製品のクオリティやコストの面で圧倒的に有利になるのです。

 

(3)徹底した無駄の排除

 

たとえば、事業規模の大きな企業は多くの予算を広告宣伝費に割り当て、テレビコマーシャルや新聞、雑誌でのプロモーションを展開しています。

 

一方、キーエンスは取引先が個人ではなく企業のため、大規模の宣伝を行って販売を促進する必要がなく、ほとんど広告宣伝費を計上していないという特徴もあります。加えて(1)でご説明したとおり、営業担当者による直販を行っているため代理店に対する販売手数料もかからず、必要経費が最小限に抑えられているのです。

 

(4)誰でも営業で結果が出せる仕組み作り

 

キーエンスでは、営業プロセスが標準化され、徹底した管理が行われています。日本一給料の高い会社という触れ込みから、キーエンスにはどんな企業でも口説き落とせる“スーパー営業マン”が多数在籍しているようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実情は異なります。

 

極論をすれば“誰が担当しようが再現性の高い営業手法に基づいて活動すれば、自ずと高い成果が上がる仕組み”になっているのです。各営業担当者がコンサルティング営業を行って顧客の細かなニーズも汲み取り開発を行った新製品を、同じようなニーズを持つ全世界の取引先に広げることにより、効率よく売り上げを作ることが可能になっているのです。

 

最小の設備と人員で最大の生産性を上げる仕組みを緻密に組み上げているのが、キーエンスの強みです。どこの企業でもすぐに真似ができるものではありません。それでも、参考にできる部分はあるはずです。強い企業は、シンプルで力強い理念とメソッドを確立しているものです。

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安部徹也

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