【SNSで話題】残業代請求に「タイムカードの撮影」は有効? 退職後でも請求できるってホント?
毎日2~3時間程度のサビ残をさせられてて、退勤時に打刻機を見ながら「この時間分の残業代がもらえたらなぁ…」と思い、出勤時と退勤時に携帯のカメラで毎日撮影してたんだけど、退職時に本社に残業代請求とその証明として送ってみたら、本社から偉い人が示談交渉に飛んできて、残業代払ってくれたよ
— 明桜ちけ@エッセイ漫画更新中 (@asakurachike) 2019年1月30日
未払いの残業代、諦めていませんか。タイムカードの打刻機を毎日撮影した記録が残業の証明となり、会社側が残業代の支払いに応じてくれたという投稿が話題になっています。弁護士であり、フェリクス少額短期準備株式会社 代表取締役、イーリス総合法律事務所代表の多田猛さんに、残業代の支払いについてお話をうかがってみると、
まず前提として、実際には勤務しているのに、残業を許さずにタイムカードを押させるという会社の運用は違法行為なので、闘っていきたいですね。
ということで、具体的に残業代を請求する際に証拠となるものについて、教えていただきました。
タイムカードの打刻機を撮影することは、いいアイデアだと思います。ただ、会社によってはタイムカードの打刻機の写真を撮ることで、怪しまれる場合もあるでしょう。
他には、パソコンをつけた時間と消した時間の写真を撮るのも有効です。これだと自席なのでやりやすいかもしれません。また、日記をつけておくことで裁判所が残業を認めてくれるケースもあります。
大切なのは、日々のこまめな記録ということですね。複数の方法で証拠集めをすれば、より残業代請求が認められやすくなるはずです。
残業代は「利息も請求できる」という話がありますが、本当でしょうか。
可能です。正確には、在職中については「遅延損害金」、退職後については「遅延利息」の請求が可能です。
在職中に発生する遅延損害金については、会社であれば年利6%(非営利組織の倍は5%)。退職後に発生する遅延利息については、「賃金の支払の確保等に関する法律」という特別法があって、年14.6%も請求できます。
労働者にとっては、これも重要な請求ですし、雇用者側としては、未払賃金が後から請求されると手痛い結果を招くということになりますね。
さらに多田さんによると、法律上は過去2年間の未払賃金の支払義務があるのだそうです。雇用者側が、任意に2年間を超えて未払賃金を支払うということも認められるので、まずは過去の未払賃金全てを請求してみるという方法もあるとのこと。
ちなみに、雇用者側からすると、従業員に未払いを指摘された際、どのような対応をすれば社会的なダメージを少なくできるでしょうか?
基本は、未払賃金を発生させないということに尽きますね。昨今の労働時間管理の重要性が高まっている世情からすると、違法な取扱は会社の評価を下げかねません。労働者もインターネットで調べるなどしてあらかじめ知識を持っていますから、労働基準監督署に通報される、SNSなどで暴かれるなどして、企業価値が低下するリスクがあります。
労働時間の管理は、経営者の多くが想像しているより難しいので、未払残業代を従業員から請求された場合は、弁護士や社会保険労務士に相談することが重要です。しっかりと社内調査し、本当に未払が生じているか、生じていたとしてその金額がいくらかを精査する必要があります。
ちなみに、多田さんが遭遇した経営者のなかには、驚きの発言をする人も……。
「うちの会社は全然労働時間管理ができていないから、従業員の未払残業代の主張なんて、それが本当かどうか、過去に遡って調べようがないよ」
調べられないから払えないというのは本末転倒で、労働時間管理は会社の義務です。会社側として、「この労働者の本当の勤務時間は〇時間だ」と客観的な証拠をもって証明できなければ、労働者の言い分がほとんど認められると言っても過言ではありません。
労務管理・勤怠管理ソフトやアプリなどもあり、客観的に労働時間を記録できる仕組みが簡単に導入できる時代。タイムカードも含めて、客観的な労働時間の記録が原則であり、嘘の打刻をさせるのはもってのほかだと多田さんは指摘しています。
従業員が自己申告で勤務簿などに記入する場合でも、上司が客観的に全従業員の勤務が自己申告とあっているかを定期的に確認することが求められています。トラブル回避は、予防が一番大切。証明責任は会社にあるのです。