「同じ経験ある…」酔っ払いのおじさんが席を譲ってくれたけど、それを拒否した妊婦さんの心情

コラム

 

東京メトロ沿線の話題を中心に発信するウェブ情報メディア『URBAN LIFE METRO(アーバン・ライフ・メトロ)』が、わりと斬新なスタイルで、いくつかの4コマ漫画をアップしていた。どこらへんが「斬新」なのかと言えば、その4コマ漫画の下に作者のショートインタビューが併載されているのだ。

 

女性向けビューティ雑誌『VOCE』や男性向け専門誌『さくらんぼ通信』ほかで4コマ漫画を数年も連載し続けてきた実績を持つ“漫画家・ゴメス”からすると、「漫画という作品を文章でフォローするのは反則ではないか?」「4コマ内で読者にすべてを伝えられないのは、作者の実力不足ではないのか?」……なんてインネンの一つも吹っかけたくはなるのだけれど(笑)、まあいい。おじさんの小言みたいな話を、これ以上引っ張るのはやめておこう。

 

で、その作品群のなかに『満員電車で声を掛けてきた泥酔男性の不器用な優しさを描いた漫画「オジサン、やるぅ〜」』なるタイトルの4コマ漫画があった。作者は「どらミー」というペンネームの、東京に15年在住している女性イラストレーターさんで、普段はビジネス雑誌の漫画などを手掛けているという。その内容のあらましは、以下のようなものである。

 

(どらミーさんが)妊娠中に帰宅ラッシュの満員電車に乗っていたとき、席に座っていた60歳くらいの泥酔したおじさんに「おいニンプ!」と声をかけられる→よくよく聞いてみれば「あんたニンプだろ? 席変わってやるから座れよ」ってことだった→「ニンプ」という不躾な呼び方にムッとしてしまったのと、おじさんの大声が恥ずかしくて、その場ではおじさんの好意を断ってしまった→しかし、電車を降りたとき「酔っぱらっていても妊婦さんに気が回るおじさんはすごいな…」と素直に席へと座らなかったことを後悔した

 

う〜ん……なかなかにデリケイトな問題ではないか。たしかに、いくら酔っぱらってはいても、いきなりの「ニンプ」って呼びかけにムッとしてしまい、そのせいで「座るor座らない」の判断が瞬時に下せなかった、ズバッと内角に来た初球ストレートをつい見逃してしまうかのような心理は十分理解できるし、これは同記事のコメント欄にもあったんけど「難しい事考えずに素直に座って欲しい。そうすれば、譲った人はまた別の人にも譲ろうと思うかもしれない」といった“譲る側”の勇気と、それをむげにされた際の煮え切らない心情もわからなくはない。

 

じつは、私もホンの数日前、このどらミーさんと同じような体験をした。私は夜11時すぎの満員電車で酔っぱらって、つり革を握りながら立っていた。すると、前に座っていた20代前半くらいのOLさんが「席変わりましょうか?」と声をかけてきた。最初は違う人に声をかけているのかと疑った。でも、私の両隣は若いサラリーマンと学生風のアンチャンで、どう見ても席を譲ってくださろうとしている相手は私しかいない。そのOLさんの目には、そこまで私が泥酔しているように映ったのだろうか? それとも、席を譲らねばならないクラスの“お年寄り”と映ったのだろうか? ちなみにそのときの私は相場英雄の文庫本を読んでいて、服装はシン・ゴジラのTシャツにY3の半パン&サンダル……読書ができる程度には正気だったわけだし、外見も“お年寄り”ってよりは“年齢不詳のチャラいおっさん”──つまり、席を譲られる理由が思い浮かばなかったのだ。そして、挙げ句に私が取ったリアクションは……「無視」。聞こえないふりをしてまた文庫本へと目を落としたのであった。

 

その後、不自然なほど頑ななまで読書に集中(するフリを)してしまったため、OLさんの表情はチェックしていない。が、なんか悪いことしちゃったなぁ……と、電車を降りてから猛烈に後悔した。だからこそ、そんなアンニュイな想いを漫画なり文章なりの自分が持ちうる表現手段で吐露したくなる、どらミーさんの気持ちも察して余りある。なので、この場を借り改めてお詫びしたい。OLさん、本当にごめんなさい……と。

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