「岐阜タンメン」に「近江ちゃんぽん」…これからのラーメン・ネーミングは、ある二つの要素がキモ!?
『朝日新聞DIGITAL』が『愛知なのに「岐阜タンメン」 名前の由来は恩返しのため』なる、ちょっぴりソソられるタイトルの記事を配信していた。
「岐阜タンメン」とは、ニンニクと野菜からうまみを抽出した塩ベースのスープと平打ち麺を特徴とするタンメンのこと。しかし、岐阜県発祥のラーメンかと思いきや、第一号店(2009年出店)は愛知県稲沢市で、店名も『タンメン専門店 板谷』。当時、東海地方では(タンメン)専門店は珍しく、屋台だったこともあってか、毎日閑古鳥が鳴いていた……らしい。そろそろ店を閉めようかと考えていたとき、ちょうど岐阜市に良い空き店舗が。「ここでダメなら完全撤退しよう」と『元祖タンメン屋』としてオープンしたところ、行列ができる大人気店に。現在では愛知県に10店舗、岐阜県に8店舗を展開するまでに成長を遂げているという。
全店舗の屋号を『岐阜タンメン』に統一したのは2017年。愛知発祥なのに、しかも愛知のほうが店舗も多いのに、なんで「岐阜」? その理由を朝日新聞の取材に応じた広報担当の廣井朗さんは、こう語る。
「存続できたのは、たくさんの岐阜の人たちがお店に来てくれたおかげです。その恩返しをしたいという思いが込められています」
じつにイイ話ではないか。だけど「イイ話」である以前に、私は単純にこの「岐阜タンメン」という字面(じづら)に魅せられた。なので、わりと地味系な内容のニュースであったにもかかわらず、ついついタイトルに釣られ、クリックしてしまった。むっちゃ食べてみたい! 東京に進出する予定はないんですかね……!?
先日、『銀座イングス』という、古くからあるショッピングビルを歩いていると、『近江ちゃんぽん』という、滋賀県民のソウルフードである(そうな)料理名を前面に掲げる『ちゃんぽん亭総本家』というお店を発見した。惜しくも、このときはすでにカレーを食べて満腹だったので入店を断念せざるを得なかったのだが、今度銀座へと立ち寄った際には、やはりゼヒ足を運んでみたいと思っている。
「岐阜タンメン」に「近江ちゃんぽん」……これらのネーミングに共通しているのはズバリ!「A:(我々シロウトからすれば)あまりラーメンと馴染みがない、マニアックな地名」と「B:もう一歩だけ細分化されたラーメン種」のマッチングだ。一昔前なら、たとえば「和歌山ラーメン」ようにAだけのインパクトでも十分に勝負できたが、ここまで全国津々浦々から生まれたご当地ラーメンがメディアやネットで紹介され尽くされてしまった昨今では、さすがにヒキが弱くなりがち? だから、Bの「タンメン」「ちゃんぽん」なのである。
あと、Bの表記をひらがなにするか、カタカナにするか、漢字にするか、それともこれらの複合系にするか……も重要だったりする。「ラーメン」の表記一つ取っても「らーめん」「拉麺」「老麺」「らぁ麺」「○○そば」……ほか、こんなにたくさんある。『サッポロ一番』だって「みそラーメン」に「塩らーめん」……と、さり気ない“仕事”が施されている。そういう意味で、「岐阜」には「タンメン」、「近江」には「ちゃんぽん」──「岐阜たんめん」「近江チャンポン」と比べたら、じつに座りがいい。まさに完ペキなケミストリーと言っても差し支えないのであった?