『るろうに剣心』最強・最凶・最恐の志々雄真実 最期まで貫いた“弱肉強食”の哲学
全5部作となる実写映画化も成功した人気漫画『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』。主人公・剣心とその宿敵・志々雄の戦いは、壮絶な展開と盛り上がりを見せます。今回は、その志々雄の強さの根源とも言える精神面や哲学についてフィーチャーしていきます。
■剣心の前に立ちはだかる最大の強敵・志々雄真実
幕末の動乱の時代に、剣心の後釜となる“人斬り抜刀斎”として暗躍した志々雄真実。しかし、その雇い主である維新志士(のちの明治政府)側は、志々雄の底知れない功名心や支配欲を恐れ、抹殺します。さらに遺体に火までつけて完璧に葬り去ったのですが…。
全身火傷になりながらも、底知れない生命力で志々雄は生き延びていました。そして作中では、復活後に一大兵団を築いた志々雄が打倒明治政府を企み、それを阻止すべく剣心が立ち上がるのです。
さて、そんな志々雄と剣心との対決は、本作でも最大の見どころとも言える盛り上がりを見せ、魅了されたファンも多いはず。飛天御剣流・奥義を習得した剣心を生死の際まで追い込んだ志々雄の強さの秘密、そして魅力について振り返っていきましょう。
■復讐に興味ナシ、志々雄が国家転覆の野望を抱く理由
新月村にて志々雄と剣心が初めて顔を見合わせた場面。剣心に同行していた齋藤一は、志々雄に「明治政府に復讐する気かい」と尋ねます。それに対して志々雄は「俺はね この傷をつけた連中に今更復讐する気なんてさらさらないんだよ」ときっぱり。
かつての維新志士、つまり現・明治政府に捕まって焼かれた経験が、むしろ自身にいろいろなことを教えてくれたと志々雄は語ります。そしてその経験こそが志々雄をさらに強くし、国盗りの野望をあと少しで掴めるまでの巨大勢力へと成長させたというわけです。
続けて、今この時代を「戦国時代以来、300年以上を経てやって来た久々の動乱の時代」と言い放ち、「そんな時代に生まれ合わせたのなら 天下の覇権を狙ってみるのが男ってもんだろ」と大きな野心を見せるのでした。
■志々雄を志々雄たらしめる絶対的な哲学“弱肉強食”
また、志々雄は、とある確固たる哲学を持っています。それは“弱肉強食”という思想。
志々雄の右腕である十本刀の一人・瀬田宗次郎は、幼い頃に志々雄と出会います。そして自身の不遇を生まれのせいにする宗次郎に、志々雄は「生まれがどーのこーのじゃねェ お前が弱いから悪いんだ」とピシャリ。
「所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ」。作中では何度も口にするこの台詞を宗次郎に説き、結果的にそれが宗次郎を生かす救いの糸となります。
きたる志々雄と剣心の最終決戦。志々雄は尋常ならざる剣気で、剣心を瀕死の状態に。しかし最後は、全身火傷を抱える志々雄の後遺症である異常体熱が自らの脂と鱗粉を燃やし、自滅。今わの際には、これから死にゆく敗者とは思えない高笑いをあげながら燃え尽きていきます。
確固たる哲学と美学を持ち、最期までその信念を曲げることなく戦いのなかに身を置き続けた志々雄。間違いなく、剣心を最も脅かした敵の一人と言えるでしょう。