【HUNTER×HUNTER】猟奇的な生物だった蟻たちが……人の心に目覚めたキメラ=アント
1998年に週刊少年ジャンプで連載を開始し、長きに渡る休載でも衰えぬ人気を誇る漫画『HUNTER×HUNTER』。凶悪な昆虫“キメラ=アント”との激闘が描かれたキメラ=アント編から、敵役ながら思いやりに目覚めた優しきキメラ=アント3人をご紹介。
■コルト/忠誠を誓った女王を守るため、人間に降伏する道を選んだ師団長
最初に紹介するのはコルト。その耳と同じように尖った特徴的なオールバックの髪型をした男性型のキメラ=アントで、鳥類と思われる大きな翼と足を一対持っています。
コルトは摂食交配という、捕食した獲物の特徴を次世代に反映していける性質を持ったキメラ=アントの女王によって生み出された兵士であり、膨大なキメラ=アントの軍団を束ねる師団長の一人として活躍。とりわけ女王に厚い忠誠心を抱いており、欲望や凶暴性が暴走しがちな他の師団長たちのなかでも規律を重んじる性格で、配下のラモットなどからは少なからず不満を抱かれていました。
彼の人格に大きな影響を与えたのは、NGL自治国に暮らしていた心優しき幼い人間の少年・クルト。不幸にもキメラ=アントに妹レイナと共に捕食されてしまったクルトの人格の一部はコルトに宿りました。それゆえか、王・メルエムの出産に際し瀕死に陥った女王を助けるため人間たちに降伏をし、その後は友好関係を築くなどの言動を見せ、キメラ=アントと人間の共存の可能性を示しました。
■イカルゴ/友情に憧れる熱い心を持った人情派のタコ型キメラ=アント
次に紹介するのは数多いキメラ=アントのなかでも、屈指の人間味を持ち合わせ、コメディリリーフ的役割も担ったイカルゴです。タコのような風貌で、ぶっとい眉に大きな目を持つイカルゴですが、本人はシュッとしたフォルムのイカに強い憧れがあるようで、タコと呼ばれるのを嫌っています。
劇中では、死体を操る「死体と遊ぶな子供達(リビングデッドドールズ)」と、弾丸を模した蚤を超圧力で撃ち出す「蚤弾(フリーダム)」という能力を併用し、師団長レオルの配下として活躍。NGLに潜入していたキルアと激闘を繰り広げました。
しかし、戦いのなかで仲間を裏切らない自身の性根を“かっこいい”と称し、「違うカタチで会えてたら友達(ダチ)になれたなって思うくらい」と言葉をかけてくれたキルアに対して、徐々に共感を覚えます。そして、キメラ=アントのオロソ兄妹との戦闘で瀕死状態に陥ったキルアをとっさに助け、以後はキルアら人間側に与し、共に死線をかいくぐりました。仲間のためなら恐怖を克服できる“かっこいい心”を持った名キャラクターです。
■ブロヴーダ/死闘の後、優しさに目覚めたロブスターのようなキメラ=アント
最後はキメラ=アント編でも指折りの感動シーンを生み出したキャラクターの一人、ブロヴーダを紹介します。二足歩行のロブスターのような見た目のブロヴーダは、女王を守る師団長の一人として生み出されたものの、メルエムの誕生に伴う女王の死亡により、仕える相手をメルエムに鞍替えしました。
メルエムが居を構えた東ゴルトー共和国の宮殿でのゴンたち一向との戦いでは、人間側についたイカルゴと対峙。両の爪から放つ強力な念弾でイカルゴを追い詰めますが、催眠ガスを使った知略に敗れ、眠ったまま戦線離脱。事実上のキメラ=アント軍団の崩壊を経て人間への敵愾心や目的を失った彼は、臆病なキメラ=アントの少女・シドレと共に、彼女の人間時代の故郷であるNGLの小さな農村を訪れます。
実はシドレの人格は先に紹介したコルトの人間時代・クルトの妹であるレイナ。子供を失い悲嘆に暮れていた彼女の母親の元にシドレを連れていった彼は、一人あてもなくその場を去ろうとします。しかし、ここまで連れてきたことに感謝するシドレに手を掴まれ、「いっしょにごはん食べよ?」と語りかけられた彼は、忘れていた人の優しさを思い出して涙したのでした。