『るろうに剣心』“最後の宿敵”斎藤一と剣心、ラストバトルが描かれなかった意外な理由
全5部作となる実写映画化も大ヒットした人気漫画『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』に登場する、元・新選組で現・明治政府警官の斎藤一は主人公・剣心の好敵手。しかし物語終盤で剣心から挑まれる決闘にはなぜか応じません。今回はその理由を考察!
■飛天御剣流が打てなくなる前に、決着をつけようとする剣心だが…
「人誅編」で雪代縁との死闘が終わった緋村剣心は、戦いでの身体への負担や度重なる怪我によって、自身の流派である飛天御剣流が将来的に使えなくなることを医者である高荷恵から言い渡されます。
その前に、“最後の宿敵”である斎藤一との決着だけはつけなくてはと決意する剣心は、斎藤宛に果たし状を送りますが……。斎藤はそれを無視し、時刻になっても剣心が待つ決闘場所に姿を表すことはありませんでした。
かつては剣心と戦いたいがために剣心が居座る神谷道場を襲撃したこともあり、剣心と伯仲の戦いを見せた斎藤。念願であるはずの剣心との決闘の機会を、なぜ自ら無下にしたのでしょうか。
■斎藤一と剣心の戦いを振り返る――好敵手であり仲間でもある関係性
斎藤と剣心の因縁が生まれたのは、“人斬り抜刀斎”の剣心と新選組の斎藤が対峙した幕末の時代。明治11年を舞台とする『るろうに剣心』本編にて、斎藤が初めて剣心と剣を交えた際は、「“不殺(ころさず)の流浪人(るろうに)”がお前を明らかに弱くしたんだ」と一度は剣心に失望します。
とはいえ、戦いが白熱していくにつれて、剣心が徐々に幕末の頃の力を取り戻していくことを斎藤は実感。しかし、盛り上がってきたところで戦いは中断され、勝敗はつかずじまいに。その後は志々雄討伐や雪代縁との決戦に、任務として同行し剣心と共に戦うことになります。
度重なる戦いを乗り越えることで、幕末時以上の力をつけた剣心を間近で見てきた斎藤は、剣心と決着をつけたいと強い思いを抱いていてもおかしくなさそうですが……。
■斎藤一の発言から、斎藤が剣心からの果たし状を無視した理由を考察
斎藤が決闘に応じなかった理由を探るにあたり、決闘当日に斎藤が元・志々雄の部下で警視庁の密偵となった張(ちょう)と交わした会話が、ヒントになるのではないでしょうか。そこで斎藤は、「俺が決着を望んだ相手は人斬り抜刀斎であってあの男ではない」、「人を殺さなくなった人斬りなどと今更決着をつけてももはや何の感慨も湧きもせん」と発言。
しかし、剣心を襲撃した初登場時に剣心の本来の強さを呼び覚まそうと奮闘した斎藤の言動を鑑みると、幕末の人斬り時代より強くなった現在の剣心は相手にとって不足はなく、発言内容は矛盾しているようにも見えます。斎藤は、剣心との決着を恐れ避けたのかとも……。
一方で、剣心と一緒に戦い続けるうち、守る者のためにより強くなれる剣心の姿を見て、斎藤は決着をつけたくなくなったとも受け取れます。つまり、守る人がいる者相手に、死ぬかもしれない戦いをしてまで決着を着けることに意味を感じなくなった……と。もしかしたら、それが斎藤の本心だったのかもしれません。
幕末、新選組として命を懸けていた頃と変わらず、明治になっても「悪・即・斬」の信念のもと行動し続ける斎藤にも、妻がいることは作中で明らかになっています。剣心との決闘を拒んだのは、家庭を持つ斎藤なりの人情だったのでは……と想像してみると、胸が温かくなりますね。