今、流行りの「ピクトグラム」を描いてみたいアナタは、まず「棒人間イラスト」を習得せよ!

コラム

 

新型コロナウイルス感染再拡大を受けての無観客開催や演出責任者の相次ぐ交代……と、迷走を重ねた東京五輪2020の開会式において、国内外を問わず「楽しかった!」と大きな話題を呼んだのが、パントマイムアーティスト3人による「ピクトグラム50個の連続パフォーマンス」である。

 

そして、そんな絶賛の声がメディアやインターネット上を賑わせるなか、五輪ピクトグラムをパロディ化した“作品”がYouTubeやSNSでも多く投稿されている。

 

念のため。ウィキペディアによると、「ピクトグラム(pictogram)」あるいは「ピクトグラフ(pictograph)」とは、

 

一般には「絵文字」「絵単語」と呼ばれ、何らかの情報や注意を示すために表示される視覚信号(サイン)の一つ。

 

……と解説されている。原則としては地と図に明度差のある2色を使って、伝えたい概念を単純な図として表現する技法が用いられるのだという。

 

だが、まがいなりにも「イラストレーター」の肩書きを持つ私に言わせるなら、この極限まで不必要な要素を削ぎ落としたうえでシンプル化された「視覚信号」を作成する作業は、じつのところ難易度としてはかなり高く、並みならぬセンスとそれなりの習練なしでは、陳腐な駄作へと成り下がってしまうのが関の山……だったりする。そこで! 今回ぜひオススメしたいのが「棒人間イラスト」!!

 

「棒人間イラスト」とは、読んで字のごとく「丸と棒線だけで描くイラスト」のことで、その指南書として出版された『仕事に使える! 棒人間図解大全』(自由国民社)は、発売日(今年5月末)からわずか1週間で重版がかかるほどの勢いで売れまくっているとも聞く。

 

 

「絵心ゼロの人でもできる、やさしいアウトプット&コミュニケーション術」

 

……なるフレコミで、ちょっとしたコツをおぼえるだけで、その「ストイックならくがき」は、無尽蔵の表現力を発揮できるらしい。

 

同書の著者であるMICANOさんは、こう語る。

 

「“人間を記号化する”という意味で、STICKMAN(=棒人間)と五輪ピクトグラムは同じタイプのグラフィックなのかもしれませんが、頭部の丸の下に“大”の字を描くだけの棒人間は、漫符や言葉も自由に付け加えることができるぶん、より気軽にチャレンジできるはずです」

 

では、さっそくMICANOさんから、この棒人間を上手に描くコツをいくつか伝授していただこう。

 

1.「脊椎(背骨)」を意識する

体は頭と背骨を中心につくられており、背骨は一本の線ではなく、ひとつ一つのブロックでできている。したがって、胴体を表す棒線部分はもちろんのこと、手足も自然かつ自由に曲線化させてかまわないのだ。

 

2.「漫符」を利用する

ウキウキした気分を表す「♪」に睡眠を表す「Z」……ほか、棒人間を生き生きと見せるために欠かせないのが「漫符」。ワンポイントでありながら物事の性質や状態を表現する形容詞や動詞としても重要な役割を果たしてくれて、漫画との親和性が高い日本人にはとくに馴染み深いアイコンでもある。

 

3.「首の位置」を意識する

てっぺんに丸がついた胴体の縦棒に手足の横棒を入れる際、その位置が上すぎたら首が詰まって見え、逆に下すぎたらキリンのように間延びした棒人間になってしまう。程よいバランスを考えよう。

 

4.頭部の丸の下に「大」の字を描く練習を繰り返す

首の位置のバランスを測るためにも、ひいては“描けない”という思い込みを払拭するためにも有効な訓練。理屈はわかっていても反復練習をしなければ思い通りの“速い線”を描けるようにはなれない。

 

5.描いたものを人に見せる

絵は他人に見せてこそ上達するもの。自分がささっと描いた棒人間で、その意図が第三者に100%伝わればしめたもの。最悪、たとえば『急げ〜!』みたいな説明言葉を横に付け足すのも全然アリ!

 

ちなみに、本コラムの冒頭にある棒人間イラストは、不肖ワタクシ山田ゴメスが、前述のアドバイスを踏まえて描いた渾身作──「ホントにアンタはイラストレーターなんかい!?」と突っこまれてもしょうがないほどに拙い出来(=まだ線がビビっている?)であるものの(笑)、おそらく「アーチェリー」という但し書きがなくとも、そのモチーフがなにを表現しているかくらいは、世界中のヒトたちにどうにか伝えることができるだろう。そう!「ピクトグラム」……それに「棒人間」は国境を越える、Google翻訳に勝るとも劣らない最強のコミュニケーションツールなのだ!

 

【MICANOさん:プロフィール】

MICANOさん

武蔵野美術短期大学油画科卒業。ファッションイラスト専門会社、『学研』幼児局編集部契約社員、『リクルートFromA』にてイラストレーターとしての経験を経て、その後フリーランスに。広告・カレンダー・化粧品メーカー・劇場・出版社など取引会社は100社以上、書籍のための挿絵は数万点を超えて描き続けている。2013年から東京都『水の科学館』HPにて漫画2本を連載。2015年より「棒人間の描き方教室」を各地で開催。

 

https://www.micano.biz/

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