大河『鎌倉殿の13人』主演の小栗旬 なぜ彼は日本を代表する役者にまで成長したのか?

コラム

citrus 堺屋大地

 

恋愛コラムニストであり、『Smart FLASH』(光文社)でドラマ批評連載を持つドラマウォッチャーの筆者が、現在、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)に主演中の小栗旬さんが、日本を代表する役者に成長した理由を考察させていただきます。

 

 

■三谷幸喜さん脚本の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に主演

小栗さん主演、三谷幸喜さん脚本の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。鎌倉幕府を開いた源頼朝の亡き後、主人公・北条義時(小栗さん)を中心に、幕府を支えた13人の宿老たちが苛烈なパワーゲームを繰り広げていく……という物語です。

前作の大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)は、初回の世帯平均視聴率20.0%、個人全体視聴率12.5%でした。『鎌倉殿の13人』は初回が世帯平均視聴率17.3%、個人全体視聴率10.6%だったため下回っていましたが、視聴しているファンたちからの評判は上々のようです。(※視聴率はビデオリサーチ調べ/関東地区)

本作の見どころは頼朝亡き後の13人によるデスマッチ。きれいごとを抜きにした内部闘争が激化すればするほど、視聴率は上がっていくかもしれません。

 

 

■TBSの看板枠・日曜劇場『日本沈没』で見せた圧巻の演技

小栗さんと言えば、前クール(2021年10月期)に放送されていた日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』(TBS系)でも主演を務め、高視聴率を獲得していました。

地殻変動により日本が沈没してしまうという未曽有の危機において、国民を守るために尽力する環境省のエリート官僚・天海を熱演していたのは、記憶に新しいところです。

特に筆者の印象に強く残っているのが、第5話で天海が娘と再会するシーン。

関東沈没が始まって首都圏の沿岸部が海に沈んでしまい、天海の妻と娘が避難するために乗っていたバスが、そのときの地震でトンネル崩落事故に巻き込まれていました。事故現場付近の町まで向かった天海は無事に娘を見つけ出し、抱きしめます。

「ああああ……よかった……。あああああぁ……ああ……ああぁ、よかったぁぁ」

その際の天海の言葉にならない安堵の叫び。このシーンの小栗さんの演技が圧巻で、ニコニコの笑顔ではなく、まるで放心しているかのように「あああああぁ」と発していたのです。

“こう演じよう”と計算して演じられるレベルではない感情表現に思えましたし、そこにいたのは“小栗旬”ではなく紛れもなく“天海啓示”だと感じたものです。TBSの看板枠・日曜劇場で、ここまでの域の演技を見せたことで、役者・小栗旬の評価はさらに高まったのではないでしょうか。

 

 

■2007年の『情熱大陸』ではアイドル俳優のイメージを打破

そんな小栗さんと言えば今なお語り草になっているのが、まだアイドル俳優として注目を集めていた2007年当時に放送された『情熱大陸』(TBS系)。常軌を逸した過酷スケジュールをこなしながら、人間として、役者として苦悩を続ける小栗さんの200日間に密着したドキュメンタリー番組でした。

『情熱大陸』では小栗さんの名言が数々飛び出しましたが、そのなかで彼はこんな言葉を発していました。

「結局今の俺の人気なんて、あと1年で終わるんですよ、絶対。今のこのバカみたいな人気がね。それで調子に乗ってもさぁ、自分が壊れるだけだから。逆に今は、こんだけ応援してくれてる人たちを、裏切りたいと思うことのほうが強いですよね」

過熱した自分の人気を冷静に俯瞰して見つめ、そのアイドルイメージを自らの手で破壊してきたからこそ、今の“小栗旬”があるのではないでしょうか。

――これまでにもドラマ『花より男子』シリーズ(TBS系/2005年~)の花沢類役、映画『クローズZERO』シリーズ(2007年~)の主演、映画『銀魂』シリーズ(2017年~)の主演など、いくつもの代表作を持っている小栗さん。

その代表作のなかに『日本沈没-希望のひと-』と『鎌倉殿の13人』も加わることでしょう。

ブレイク時のアイドル俳優としてのイメージを自らぶっ壊し、日曜劇場では役が憑依したかのような圧巻な演技を見せ、満を持して国民的ドラマ枠である大河ドラマに主演。小栗さんが今や日本を代表する役者に成長しているということに、納得する方は多いのではないでしょうか。
 

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