元TOKIO・長瀬智也の引退から1年…今振り返る出世作『IWGP』と最終作『俺の家の話』
元TOKIOの長瀬智也さんが昨年3月末で芸能界を引退して約1年。そこで恋愛コラムニストであり、『Smart FLASH』(光文社)でドラマ批評連載を持つドラマウォッチャーの筆者が、長瀬さんと脚本家・宮藤官九郎さんがタッグを組んだ伝説の2作品を考察します。
■カラフルなモザイクのようだった出世作『IWGP』
長瀬智也主演×宮藤官九郎脚本のドラマや映画は計6作品。
ドラマでは初タッグ作となった『IWGP』こと『池袋ウエストゲートパーク』(2000年/TBS系)を筆頭に、『タイガー&ドラゴン』(2005年/TBS系)、『うぬぼれ刑事』(2010年/TBS系)、『俺の家の話』(2021年/TBS系)と4作品あります。
映画では宮藤さんが脚本だけでなく監督も務めた『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005年)、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)の2作品でした。
実に鮮烈だった『池袋ウエストゲートパーク』は、例えるならカラフルなモザイクのようなドラマ。
本作は、池袋西口公園を中心にして起こる、コギャルが殺害されるというサイコパスな殺人事件や、カラーギャングたちのゴリゴリの抗争が描かれた、石田衣良さんの小説が原作でした。そんな原作をもとに、宮藤さんがバイオレンスありギャグありで、 “2000年の池袋のリアル” を生々しく描き切ったのです。
池袋のアンダーグラウンドを描いた作品に、コントのようなコメディ要素を多分に取り入れられたのは、宮藤さんの卓越したセンスがあってこそ。しかもギャグに振り切るわけではなく、バイオレンスやサスペンスのパートはきちんとシリアスに描き、コメディのパートではきっちり笑いを取る ――そのバランスが絶妙だったのです。
同じ原作小説だったとしても、もし他の脚本家が起用されていたら、今なお語り草となるような伝説的なドラマにはなっていなかったのではないでしょうか。
■ネタバレあり! 衝撃的な最終作『俺の家の話』
そして長瀬さんが最終作に選んだのが『俺の家の話』。
プロレスラー観山寿一(長瀬さん)が、能楽の人間国宝である父を介護するために引退し、家族をまとめていくという異色のホームコメディでしたが、最終回が非常に衝撃的だったのです。
最大のネタバレがありますので、『俺の家の話』の結末を知りたくない方は、この先は読まないでください。ホームコメディだったにもかかわらず、大団円でフィナーレを迎えたとは言い難く、視聴者や長瀬ファンは唖然・呆然としたことでしょう。
ではここからはネタバレありで解説していきます。
実は最終回で、長瀬さん演じる寿一はプロレスの試合中の事故で死亡してしまうのです。介護ヘルパー・志田さくら(戸田恵梨香さん)との結婚を決意して幸せにすると宣言していただけに、寿一の死亡展開は驚愕……。
長瀬さんの引退は決まっていたため続編が作れないことは既定路線。しかしファンたちは心のどこかで長瀬×宮藤のタッグが復活し、何年後かに『俺の家の話』の続編が描かれるのではないかと期待していたのではないでしょうか。
その期待を良くも悪くも裏切り、続編を作る余地をきっちり断ち切ったのは、宮藤さんなりの長瀬さんへのエールだったのかもしれません。
――引退後の長瀬さんは大々的に表舞台に出てくることはありませんが、Instagramで彼の近況を知ることができます。どんな形でもいいので、またいつか俳優・長瀬智也の演技を見てみたいものです。