あえての「サイゼ初デート」で「女性の性格を見極める」という男性のあまりに緩慢な思考回路

コラム

 

数年前から、

 
「初デートがサイゼリヤはアリか、ナシか?」

 
……という論争がネット上をたびたび賑わせている。

 
説明するまでもないが、『サイゼ(リヤ)』とは、リーズナブルな価格でなかなかに美味しいイタリア料理を提供してくださる、「庶民の味方」的な(チェーン系)飲食店の代表格とされるファミリーレストランのことである。ファミレスとはいえ、トラットリア調の内装やメニューを(ほぼ)忠実に再現しているため、「じゃあ、デートで使っても全然かまわないのでは…!?」みたいな問題提起がどこからか出てきて、今日(こんにち)の論争へと発展した……と推測できる。

 
「アリ派」の意見は、おおよそだと

 

 
「楽しく過ごせたら、どんな店でもOK!」

 
「かしこまった高級店だとかえって緊張してしまうけど、サイゼならリラックスして会話ができる」

 
「ぶっちゃけ“食”にはあまり興味がないので、そこそこの味だったらどこでもいい」

 
……といった論調であるが、なかには

 
「(初デート)サイゼで反応を見ることによって、金目当ての女性を排除できる」

 
……なんて風なことをおっしゃっている男性も散見する。本当に「サイゼ」で女性のそこらへんのことを見極めるのは可能なんだろうか? 正しいのか?

 
私がまだ若かりし未熟だったころ、こんなことがあった。とある女性との初デート。当時、私はまだ40代前半で、たしか相手はアラサーあたりだったと記憶する。待ち合わせは池袋駅の西口。急に決まった初デートだったので、私はその日お店を決めるヒマもなく、ノープランのまま、行きつけだった立ち飲み系のやきとん屋へ、彼女を連れて入った。そのやきとん屋は小汚くて狭苦しく、繁盛店ゆえ店内は騒がしかったりもするのだけれど……とても良心的な料金で、そのわりには味もしっかりとした丁寧な料理を食わせてくれる気安い、私が(今でも)大好きなお店であった。

 
もちろん、お金をケチる気なんぞさらさらなく、「自分が美味しいと何度もリピートしているやきとんやモツ煮込みやレバーのたたきを彼女にも食べてもらいたい」という単純でピュアな動機しか私にはなかった。もしかすると「あえて定番のデートコースを外し、穴場的な大衆店でアダルトなサプライズと余裕を演出する」程度の野心はあったのかもしれない。

 
しかし、そんな私の独りよがりな目算はモノの見事に打ち砕かれ、彼女のご機嫌は右肩下がりにナナメっていくいっぽう……。トドメには、

 
「ああいうお店も嫌いじゃないけど、初デートだからせっかくオシャレしてきたのに…」

 
……と、涙目で捨て台詞を残し、彼女は足早に去っていった。それ以降、彼女とは一度も連絡が取れていない。

 
さて。勤勉なるcitrus読者の皆さんは、この彼女がいわゆる「性格が悪い女性」だと思いますか? いやいや! 「せっかくの初デート」に向けて、それなりの前準備をしてくれた女性の “好意” を無神経にも踏みにじった私がすべて悪いのだ!! なにが「サプライズ」だ!? なにが「アダルトな余裕」だ!? むしろ、別れ間際に「デリケイトな乙女心」をきちんと “レクチャー” してくれたぶん、彼女は「誠実で親切な女性」なのではないか?

 
ここまで語った私のトホホな例は「無神経」だっただけでまだマシ(?)だが、こうした一連のトリッキーなパターンを、相手が「高級なお店はイヤ!」と頑なにリクエストしていたならまだしも、確信犯的に、しかもよりによってサイゼ様を「女性の性格の見極め」に利用するのは、男性側の緩慢と傲慢以外の何物でもないのではなかろうか。その手のジャッジは、3回目や4回目のデートでも決して遅くはないのだから……。

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