上島竜兵さん死去──リアクション芸人の鑑である彼が残した名言について振り返る
人気お笑いトリオ『ダチョウ倶楽部』の上島竜兵さんが5月11日未明、東京都内の自宅で倒れているのを発見され、その後、死亡が確認された。享年61歳だったという。
一度、とあるビューティ系女性誌で上島さんにインタビューしたことがあるのだけれど、撮影も含めて1時間あるかないかくらいお会いしただけなので、この「上島竜兵」なる人物が実際はどういう感性や性格の持ち主だったのかは、よくわからない。ただ、カメラを向ければ、あらゆる無茶なリクエストにも気さくに応じてくださる、とにかくサービス精神の旺盛な人であった……ということだけは断言できる。
決して社交辞令でも帳尻合わせでもなく、私はけっこうな昔──『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)にご出演なされていたころからの、生粋たる『ダチョウ倶楽部』の大ファンだったりする。プライベートではもちろん、自身のコラムやインタビュー(された)記事でも「好きなお笑い芸人は? 」と問われたら、毎度「ダチョウ倶楽部! 」と淀みなく即答し続けてきた。15年ほど遡って探せば、おそらくメディア上にも私のそういう旨(むね)の発言がいくつか残っているはずだ。
上島さんの名言の一つに
「笑わせてるんじゃねえよ、笑われてるんだよ!」
……がある。昨今、お笑い芸人の誰もが「笑わせること」──すなわちネタの斬れ味やトークでの反射神経を前面に押し出す風潮が主流となりつつあるさなか、
「笑いが取れるかどうか(の一要素)として体つきっていうのはあるよね。この体つきね。(自分のお腹を叩いて見せて)典型的な芸人はコレね」
「リアクション芸人がトーク上手くなったら終わりだよ」
……と、ひたすら「笑われること」を追求し尽くしてきた芸人さんは大変に貴重であり、私は『ダチョウ倶楽部』のそんなブレない姿勢が大好きだし、「頭のいい人しかなれなさそう」とイメージされがちな “文筆業” という職に就きながらも、じつのところあんまし頭は良くない私からすれば、『ダチョウ倶楽部』の不器用なまでに泥臭いシンプルな芸風に、ささやかな勇気を与えられていたものである。いや、真剣な話!
5月12日に放送された『めざまし8』(フジテレビ系)で、上島さんが著書『人生他力本願〜誰かに頼りながら生きる49の方法〜』(河出書房新社)に書きしるした名言の数々から、
「刺身のツマになれば出番が無くなることはない」
「後輩だろうと才能のあるヤツには頭を下げる」
「どんなに芸風が『ヨゴレ』でも心は『ヨゴレ』ない」
「意味がなくてもやり続ければ意味が出てくるはず」
……の4つを紹介していたが、私もこれらの “格言” すべてを深く胸に刻み、「意味のないことに意味が生じる」まで残り少ない文筆人生を、あまり頑張りすぎずに精進したい。
心よりご冥福をお祈りします。