「サラリーマン川柳」が今年限りで消滅⁉ 今年も品評しつつ、名称変更について考える

コラム

 

毎年この時期になれば……「サラリーマン川柳」の「全国ベスト10」が決まり、その品評をここcitrusで勝手に行うのが私のルーティンワークとなっている──ってなわけで! 今年も第一生命保険が5月27日、第35回『第一生命サラリーマン川柳コンクール』のベスト10を発表した。とりあえずは最新の第1位作品と、その他……ゴメスお気に入りの作品の何本かを以下に紹介しておこう。

 
[第1位]

8時だよ!! 昔は集合 今閉店(山のパン屋/30代)

 

[第3位]

にこやかに マスクの下で 『うっせぇわ! 』(ヨッシー/70代)

 

[第5位]

マスク顔 確信持てず 見つめ合う(福笑い/50代)

 

[第6位]

マスクとる 緊急事態 ノーメイク(ちろすけ/30代)

 

[第8位]

恋心 マスク外せば 花と散る(ちゃかしっこ/30代)

 

[第9位]

デジタル化 しますと紙で 通知する(IoT推進部/20代)

 

今回は、まん延防止等重点措置による時短営業が求められるなか、コロナ禍の暮らしを『8時だョ! 全員集合』に掛けた一句が “グランプリ” へと輝いた。願わくば「8時だよ」の箇所を “ホンモノ” のタイトルに忠実なかたちで「8時だョ」と表記してほしかったところだが……まあ、そこらへんの細かいケチをつけるのはやめておこう。
 
あと、ベスト10中5作品に「マスク」というワードが、まるで俳句の季語のごとく使用されていたのも “このご時世” ならでは特有の目立った傾向であった。巣ごもり生活をやむなくされるなか、バラエティに富んだ “題材” をチョイスするのは困難だったのかもしれない。

 
さて! このたびはこの「最新全国ベスト10作品」以外に、あるとても重要な発表があった。なんと!! 35年もの歴史を誇る「サラセン」こと『サラリーマン川柳』の名称が、2022年9月下旬から募集開始予定のコンクールから変更されるというのだ。その名も、『サラっと一句! わたしの川柳コンクール』!!?

 
名称変更を決定した理由について、『HUFFPOST(ハフポスト)』日本版の取材を受けた第一生命保険の広報担当者は、こうコメントしている。

 

 「これまでも主婦や定年を迎えた人など、働く人に限らず応募を受け付けてきました。開始から35年の節目でもあるので、より開かれたコンクールとしてバラエティに富んだものになったらいいなとの思いを込めています」

 
「サラリーマン」という “男性” を意味する言葉が使われていることから、(サラセンが)男性を中心としてきた社会構造や男女の役割分担意識が反映されたものだとの指摘もあった……らしい。

 
たしかに昨今「サラリーマン」なるワードは徐々に死語化しつつあり、それにとって変わった「ビジネスパーソン」みたいな、私なんかからすればやや気持ち悪い外来語がちまたでは席巻しはじめている。そんな背景を敏感に察知して、たとえば「ミスコン」のように本格的な物議が世論的に交わされる前から “先手を打った” わけである。「英断」と言えば英断であろう。

 
だがしかし! この35年間で「サラセン」から生まれた名作の数々は、「サラリーマン」というどこか哀愁ただよう “昭和の香り” なしだと、その魅力が半減してしまうのではないか……と、私は考える。

 
『サラっと一句! わたしの川柳コンクール』──略したらやはり「サラセン」のまんまとなるあたりは、じつに巧妙な手口だと言える。ただ、断言しよう! ↑のニュータイトルになれば、応募作品の質は間違いなく激変、別モノになってしまう……と。「サラリーマン」を形容するにあたって、ときに使用される「しがない」的な軽い自虐を込めた、ちょっぴりネガティブなニュアンスこそが “作品” にエレジーを注入し、我々にほのぼのとした読後感と共感を与えてくれる──「ビジネスパーソン」が詠む野心に満ちたスタイリッシュな句じゃ全然ダメなのだ!

 
いっそ、ホリエモンさんとかマエザワさんとかが大枚をはたいて権利を買い取り、『サラリーマン川柳』の名を継承した格好でリニューアルしてくれたら……私としてはうれしいかぎりなのだが?

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