特撮ヒーロードラマ『人造人間キカイダー』&アニメ『デビルマン』が『8時だョ!全員集合』と視聴率を競い合っていた1972年を回顧する

コラム

 

「マンガ・アニメ・ゲーム・特撮・声優などの話題を掘り下げて分かりやすく紹介すること」をコンセプトとするネットメディア『マグミクス』が、ちょうど半世紀前──1972年の土曜日20時台のテレビ事情を回顧する主旨の記事を配信していた

 

当時、私は10歳で小学4年生。あのころの土曜の夜は、たしかまだ志村けんがザ・ドリフターズに正式加入する(1974年)前だったとはいえ、『8時だョ!全員集合』(TBS系)がブッチギリの大人気状態で、週に一度だけゴメス少年に許されていた夜ふかしタイムは我が家もこの「全員集合」、もしくは周期的に日テレ系で放映されていた「巨人×阪神戦」に、なんとなく回転ツマミ式のチャンネルを合わせていた……と、おぼろげに記憶する。

 

だがしかし! 本記事よると、1972年の7月8日にNET(現テレビ朝日系)が、毎週土曜20時から特撮ヒーロードラマ『人造人間キカイダー』、20時30分からアニメ『デビルマン』の放映をスタート──すでに30%近くの視聴率を叩き出していた「全員集合」を相手に、これら「1時間枠の変身大会」は、1クールを過ぎたころには16%もの視聴率を稼ぐ健闘ぶりを見せていたという。

 

8時半を境に、キカイダーとデビルマンが同じチャンネルでスライドしていく感じは「おぼろげに〜」……ではなく、すご〜く鮮明に憶えている。「すご〜く鮮明に〜」ってことは、両親や妹の意向(=本当に観たかった番組)をよそに、けっこうよく観ていたんだろう。(※もちろん我が家にテレビは一台しかなかった!)

 

とにかく、キカイダーもデビルマンも見た目のインパクトがハンパじゃなかった。

 

キカイダーは、左右非対称のアシンメトリーなデザインで右側は青、左側は赤──しかも赤の部分は一部中身(の機械の部分)が透けており、頭部には段差もあった。ついでに言えば、乗っているイエローのサイドカーもカッコよかった。不完全な良心を持つ人形が人間になることを目指すイタリアの童話『ピノッキオの冒険』を下敷きにしており、不完全な良心回路を持つロボット(=人造人間)が人間に近づいていく過程を描く……という、じつに深いテーマを背景とする、ある種マニアックな作品であった。

 

いっぽうのデビルマンは、悪魔(=デーモン)と人間が合体することによって誕生した「悪魔の力と人間の心」を持つ "ダーティヒーロー" が主人公──アニメ化以前から話題になっていた原作漫画の『デビルマン』(作画:永井豪)は、牙があり下半身は毛むくじゃらで尻尾まで生えている、あのころのヒーロー像とは極北的な外見で(※さすがに、アニメ版では牙も毛も尻尾もない "人間っぽい" デザインになっていた)、本来は味方だったはずの敵(=デーモン)を倒すたびに「裏切り」のレッテルに悩むデビルマンの孤独のようなものをメランコリックに描いていた。

 

「ロボットと人間」「悪魔と人間」といった狭間にいる不完全な "ヒーロー" が「良心」という人間独自の感情に時として苛まれる……そんな「弱さ」に多感な「16%」の少年たちは一時期、ドリフによって毎週繰り広げられる "定番的なお笑い" を断腸の想いで切り捨ててまで、釘付けになってしまったのかもしれない。いずれにしてもいい時代でありました……。

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