「宗教虐待」が認知されても、「未成年の相談はゼロ」。宗教2世の声を聴き考える、子の人生が親に制限されない仕組みとは。
ジャーナリストで東海大学客員教授の岸田雪子氏が子育て周辺の課題を考える連載「Bloom Room」。笑顔の “つぼみ” を花開かせる小部屋です。今回は「宗教虐待」について。
親が旧統一教会の信者である、いわゆる宗教2世の方々のお話を直接聞く機会がありました。語られる体験は深刻です。
「恋愛は殺人以上の罪だ、と家庭で教育された」
「お年玉もバイト代も、献金のため全額没収された。」
「部活を続けることが許されずに友人関係も断たれ、精神疾患に至った」
そして彼らが口々に訴えたのは、「相談できる窓口がなかったこと」です。
自治体や児童相談所に相談したと言う人も、
「宗教のことを口にした途端に、職員の態度が冷たくなった」
「『宗教のことなら警察に行って』と言われた」などと語りました。
行政側に、宗教をタブー視し、及び腰になる様子があることが伺えます。
「宗教虐待」という言葉の認知が広がっていますが、この言葉には2つの側面があると思います。
1つは、親などの養育者が、「宗教」を理由にして、子への虐待を正当化すること。
もう1つには、行政など、本来は子どもを救済する側が、「宗教」を理由にして、介入に及び腰になること。つまり、子どもは二重の苦しみに陥り、孤立しやすいのです。ですから改善策は、その両面から取られることが必要となります。
虐待には、
「身体的な暴行」
「適切な食事を与えない」
「適切な医療を受けさせない」
「言葉による脅迫、子どもの心や自尊心を傷つける言動を繰り返す」
などがあてはまるとされています。
「宗教」は、虐待を肯定したり、見過ごす理由には、決してなりません。あくまで子どもの人生が阻害されていないか、という視点で、子どもの側に立った支援、時には介入が求められます。
子どもには自分の人生の幸せを追求する権利があることを、義務教育の中で子どもたちに伝えていくことも、大切なアプローチだと思います。
では、宗教2世の子どもや若者のSOSは、どこに発すれば良いのでしょうか。
政府は現在、「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議で、電話相談窓口を設けています。
9月末に公表された結果では、相談は2000件ほどに及び、内容としては金銭トラブルが多くを占めています。
ですが相談者の年齢を見ると、「未成年はゼロ」で、これまでひとりもいません。高校生以下の子どもたちが相談先を知らなかったり、「助けが必要であること」そのものに気づくことが難しい状況が、大きな課題と言えそうです。
その意味で、学校や幼稚園・保育園の関わりは重要です。子どもたちを日々見守る先生方や、ソーシャルワーカーなどが問題に気づくことが命綱になりうるのは、他の虐待とも共通することです。
児童相談所は、保護者の親権が一時停止された時に親権を所長が代行することができますが、18歳以上の若者でも個人で逃げ込むことができる「子どもシェルター」を整備することや、「アドボケーター」と呼ばれる、「子どもの側にたつ代弁者」を速やかに設ける仕組みも必要ではないでしょうか。
旧統一教会をめぐっては、岸田総理が宗教法人法の「質問権」の行使による調査を指示しました。自民党として「決別宣言」をしているのですから、当然の方向性であると思います。
同時に、被害を受けた元信者や子どもたちへの救済と、「宗教虐待」への対応も待ったなしの状況です。
子どもの権利は、家族のものではなく、子どものものである、という大前提を守る仕組みが作られるか、注目したいと思います。
最後に、相談先を記させていただきます。
◎子どもの信教の自由を含めた人権が阻害されたり、
親が食事などの面倒を見てくれないなど虐待が疑われるとき
「子どもの人権110番」: 0120-007-110
「児童相談所虐待対応ダイヤル」: 189
◎金銭トラブルの相談
「法テラス・サポートダイヤル」 : 0570-078374
「消費者ホットライン」: 188
「警察相談専用電話」 : #9110
◎「旧統一教会」に関する相談
「相談集中強化期間・合同電話相談窓口」:0120−09059
岸田雪子さんは、子育てと介護のダブルケアの日常を綴ったブログも更新しています。
よろしければ、是非ご覧になってみてください。
>>https://ameblo.jp/yukik042