カメラマンやライターに対して「誰でもできそう」と言ってしまう人への有吉氏の返答にスカッとした件

コラム

 

テレビで放映されたバラエティ番組などの後追い記事の下にあるヤフコメ欄を眺めていると、

 

「(テレビで演っていたことを)そのまま書いただけでお金がもらえるなんて、いい仕事ですね」

 

……っぽい、同記事を書いた記者に対する皮肉めいたコメントを、今でもたまに散見する。そのたびに私は “一同業者” として、

 

「じゃあ、アンタも一度やってみたらいい!」

 

……と、つい大人気なく心の中で(時おり口に出して)毒づいてしまう。記事にしたい番組をチェックするため、テレビの前に張り付いて、ほぼリアルタイムで要点をまとめながら、放送終了後からわずか30分程度でその原稿を書き上げ、ネット上にアップする……って作業が、いかに高いライティング能力を要するか、身をもって体験してみろよ……と。ちなみに、文筆歴30年の私でも……多少の訓練を積まなきゃ、この “仕事” は絶対にできません。

 

とりあえず、義務教育さえそこそこちゃんと受けていたら基本、文章は誰にだって書けるので、こうした “迂闊な物言い” が生じてしまうのは致し方ない側面もあるのだれど、最近はスマホに内蔵されているカメラ機能の劇的なスペック向上のせいか、そんな “勘違い” が「カメラマン」という職業にまで及んでいるようだ。

 

10月14日放送の『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)で、お笑いタレントの有吉弘行(48)が視聴者から寄せられた、とあるお便りに対し、激高する一幕があった。「とあるお便り」とは、

 

「写真家なら(自分でも)なれるんじゃないかと思う」

 

「雑誌の撮影など何百枚も撮ってる。あんなにたくさん撮ったら何枚かはいい写真が撮れそう」

 

……といった内容で、この意見を受けた有吉は、以下のように語気を強めていく。

 

「芸術系のこととか芸能とかもそうだけど、誰でもできそうなね。誰でもできるっちゃあ、誰でもできるんだけど。なんか『現代アート』とか見ても『描けそうだけど』と思うからね。派手に色塗ってりゃいいんでしょ、と思うわね…」

 

(…と、理解を示した風を装ってから、豹変)「やりたいんだったら、どうぞ! そう思うならやればいいじゃない!? 悔しがっていないで。いっつも悔しがってさ。文句ばっかり言ってるけど、やればいいじゃない! できるんなら」

 

「『こんなの誰でもできます』『オレでもできる』って言うなら、なんでやんないんだよっ!」

 

「(素人じゃ無理だということを)薄々感じているだろ? オマエも! なんでそんなこと言うんだよ! オレらがカメラマンをひどいこと言うと思ったか。オマエだよ、悪いのは!」

 

お便りを寄せてくださった一般視聴者サマ相手に「そこまで言うか〜!?」とは、ちょっぴりヒヤヒヤしたものの、

 

「よくぞおっしゃってくださった!」

 

……と、ただただひたすら溜飲が下がる想いであった。

 

まず、カメラマンへの依頼とは、よほどの大御所でもないかぎり「いい写真を撮ってください」だけではなく、「自然光っぽいテイスト」だとか「シャドウをパキッとつけたテイスト」だとか……と、つまりが「これこれあーいう感じで撮ってください」みたいな、なんらかの “指定” 付きで入ってくるもの。当然のこと、そのリクエストに100%応えるためには、プロフェッショナルならではのライティングやアングル……ほか、さまざまなテクニックが必須となってくる。

 

まあ、いい。百歩譲って、先述したとおり「近年のデジカメや、スマホに内蔵されたカメラ機能の劇的な進化」で、そこらへんのハード面の部分は補えるとしよう。そして、前出の相談者の指摘どおり「何百枚もシャッターを切っていたら何枚かはいい写真が撮れる可能性が高い」としよう。

 

たしかに、我々 “素人” がiPhoneで撮りまくった写真のなかには、稀に “奇跡の一枚” 的なプロ顔負け(?)の素晴らしい写真が紛れ込んでいるケースだって、なくはない。しかし、プロは「商品に値するだけの写真が撮れる可能性が高い」だけじゃダメなのだ。たとえ、その可能性が80%でも90%でも、同じこと。万一「たまたま今回の撮影は、いい写真が撮れませんでした」と、再撮を仕切り直す……なんて羽目になってしまったら、その労力と被害は尋常じゃない。だから、編集者はリスク回避のため「(およそ)100%失敗がない」プロカメラマンに、それなりのギャラを払って仕事を依頼するのである。

 

ミスする確率が「10%」と「0%」では、雲泥の差がある……そこにこそアマとプロとの決定的な違いがあるという事実だけは、「誰にでもできそうな仕事」でメシを食う側からすれば、ぜひとも知っておいてもらいたい!

こちらの記事もおすすめ!
自作Tシャツを母が着ない理由…主人公感満ち溢れるそのワケに「可愛い」「笑った」

自作Tシャツを母が着ない理由…主人公感満ち溢れるそのワケに「可愛い」「笑った」

ページトップ