ただ加湿器を愛用していただけなのに…自覚症状のないまま命の危機に

コラム

 

芸歴30年、お笑い芸人メッセンジャーのあいはら。2020年、彼は冬に欠かせないある家電の誤った使い方で命の危機に陥ったという! 一体、彼に何が起こったのか!?

 

しゃべりが命の芸人だからこそ、あいはらは長年加湿器を愛用していた。しかも、いつも「強」で湿度は70%以上! そんな部屋で彼は生活していた。こうして、乾燥する冬はもちろん、夏でも毎日加湿器を使用。そんな生活が10年以上続いていた! これが、まさかの事態を引き起こす!

 

異変が起こったのは、2020年3月のことだった。朝起きるといつもと違うだるさを感じる……体温計で測ってみると微熱があった。当初はコロナを心配したが、熱はすぐに下がったため、感染対策をしながら静かに過ごした。

 

その後も、微熱が出たり下がったりを繰り返し、倦怠感もあったが寝込むほどではなかった。だが、しばらくすると……階段を登るときに息が苦しくなった。こうしてかかりつけの医療機関へ。レントゲン検査の結果……まさかの肺炎だった。

 

あいはらは急遽生放送を休み。総合病院へ。主治医からは「間質性肺炎」と告げられた。肺の中では気管支が23回枝分かれしていて、その末端の袋状の部分を「肺胞」と呼ぶ。「間質性肺炎」はその肺胞の壁の「間質」が炎症を起こしている状態。人間が呼吸をするとき、吸った空気は気管や気管支を通過し、肺胞に運ばれる。肺胞の周りには毛細血管が張り巡らされていて、この血管と肺胞の壁の間の「間質」で、酸素と二酸化酸素の交換、つまりガス交換が行われる。間質性肺炎は「間質」の炎症によってガス交換がうまくできなくなり、体に酸素が不足している状態。そのため、咳や息切れ、呼吸困難などが起こる。

 

あいはらに起こった全身の倦怠感や顔色が悪かったことは、酸素不足や肺内の炎症によるものだったと考えられた。重症化すると命の危険もあり、慢性化すると間質が線維化し治療が難しくなる。コロナ感染症でも、血中酸素飽和度が93%以下で、すぐに医療機関に連絡することを勧められているが……この時、あいはらは86%だった。

 

すぐに酸素の吸入が始められ、入院となったのは2020年5月7日のこと。このとき、この病院では、コロナ感染症対策による面会制限がなされていて、病室には家族も入れなかった。

 

一方で彼がこんな事態になってしまった原因は、加湿器のある使い方によるものだった! だが、このときあいはらはその事を知る由もなかった。

 

■自覚症状のないまま命の危機に


事態が一変したのは、入院したその日の深夜だった。酸素飽和度が全然上がらなかったためICUへ移動し、麻酔で鎮静がかけられ、人工呼吸器を装着。さらに肺の炎症を抑えるためステロイド薬が投与された。間質の炎症が抑えられれば、酸素を取り込みやすくなり酸素飽和度があがることが期待された。しかし……状態はよくならない。

 

このとき彼は呼吸不全を起こし、全身に酸素を送ることに障害が起きていたと思われた。こうして「苦しい」という自覚症状のないまま命の危機に。人工呼吸器が装着されたメッセンジャーあいはら。その状況は、相方の黒田にも伝えられた。数日前まで普通に生活していたのに。死を覚悟……と言われても。黒田も、家族も、ただ困惑した。

 

そんな中、ICUに移って3日。ステロイド薬などの効果もあり、酸素飽和度が安定。血液検査やレントゲンで、肺の炎症も治まってきたことが分かった。こうして、鎮静状態がゆるめられ、あいはらは目を覚ました。そして、その翌日には人工呼吸器から離脱できた。

 

原因によっていくつかの種類に分けられる間質性肺炎。そして、彼の間質性肺炎の原因が診断された。それは「加湿器肺」というものだった。間質性肺炎の中でも、加湿器の内部で発育する菌やカビに対するアレルギー反応により、肺に炎症を起こす、過敏性肺炎の一つ。

 

実はここ数年、加湿器の普及に伴い、加湿器肺を発症している人は増えているという。ウイルス感染予防として加湿器を使用する人も多いが、実は高い湿度を続けると、部屋の中に、カビや菌が発生しやすい状況になってしまう。そのカビや菌が加湿器の中に入り、こまめに清掃などせず使用すれば、部屋中にカビや菌が散布される状況になる。つまり、湿度70%以上でいつも使っていたあいはらの使い方が間違っていたのだ! 多くの加湿器の説明書にも「こまめに清掃し、水分を拭き取ってください」とある。さらにあいはらの場合は1年中、しかも長期間に渡って加湿器を使用していた。また、加湿器肺を含む過敏性肺炎になりやすい体質というものもあり、あいはらもそのような体質を持っていたと思われた。

 

加湿器肺により命の危機に陥った、メッセンジャーあいはら。アレルギー体質になり、加湿器があるところに15分以上いると肺炎の症状が現れるため、加湿器には近づかないようにしている。家電量販店にある新品のサンプル品であっても、加湿器肺になって以来、恐怖心から近寄れなくなったという。このように今回の出来事以降、その後の生活が一変してしまった。

 

きちんと使えば風邪などの予防にもなる加湿器。決められた手入れ法を守り、細菌などが発育しないよう、消毒・乾燥させ清潔に保ちましょう。(2022年1月18日OA)

 

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