「全ての店舗で離乳食を無料提供」のSoup Stock Tokyoに賛否の声…その背景にあるものは。

コラム

 

東海大学客員教授でジャーナリストの岸田雪子氏の連載「Bloom Room」。笑顔の “つぼみ” を花開かせる小部屋です。 今回は「離乳食無料サービスめぐる “論争”」について考えます。

 

スープ専門店「Soup Stock Tokyo」が「全店で離乳食を無料で提供する」と発表したことが “論争” を生んでいるようです。 「出汁の旨味」や「赤ちゃんの初めて食材」にもこだわっているという離乳食を、これまでの一部店舗から全ての店舗に拡大し、しかも無料にするという新たな方針です。

 

0歳の赤ちゃん連れの外食といえば、何を食べさせたらいいのか、食べてくれるのか、周りに迷惑をかけないか……など親御さんにとっては悩ましいイベント。 それを「ウェルカムですよ」と背中を押す取り組みは、子育て家庭の孤立を防ぐという方向性でも意義が大きいと考えていた私は、ネット上の賛否の “否” の言葉の強さに、少し驚きました。

 

中には、子育て中の方の目に触れませんように……と心配になるほどの過激な言説もあり、その一部を取り上げて “論争” とするのは無理があるのでは、と感じます。 一方で、次のような意見もありました。

 

「落ち着いた静かだった雰囲気が失われる」
「店舗がコンパクトなのが心配」

 

「Soup Stock Tokyo」といえば女性の一人客も多く、静かに食事ができる貴重な場所と捉えられていたことを考えれば、「居場所が減ってしまう」と感じる方があるのも無理はありません。 特にコンパクトな店舗では、ベビーカーとの共存のイメージがつきにくいかもしれません。

 

つまり、赤ちゃん連れも、静かに食事をしたい人(特に女性)も、どちらもが「居場所」が必要で、でも今はどちらも足りていない実情が “論争” の背景に横たわっているのかもしれません。

 

少子化が問題とされ、「こどもまんなか」や「こどもファースト」といった言葉が叫ばれるようになった過渡期のニッポンだからこそ、既存サービスの転換は、より丁寧な社会的コミュニケーションが必要と感じます。


街で、店で、バスで出会った子どもたちの行動は、時に「大人の常識」にはあてはまらないだろうけれど、彼ら彼女らを理解したり、許したり、時には諭したりすることが、「その子を育てている」ことに参加していることになる。そんなリアルな体験が少しずつでも広がりますように。その過程で生まれるかもしれない葛藤を、SNSという装置が増幅させてしまいませんようにと願うばかりです。


 

岸田雪子さんは、子育てと介護のダブルケアの日常を綴ったブログも更新しています。
よろしければ、是非ご覧になってみてください。
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岸田雪子

東海大学客員教授・元日本テレビ解説委員

岸田雪子

東海大学客員教授。元日本テレビ報道解説委員。日本発達心理学会員。 早稲田大学法学部卒業、東京大学新聞研究所(現・東京大学大学院情報学環教育部) 修了後、日本テレビ入社。報道局社会部記者、政治部記者、「...

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